2024.01.23
自治体で「無縁遺骨」「無縁墳墓等」が急増
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全国の自治体に「無縁遺骨」が約6万柱
昨年2023年2月16日付けの本コラムでは、ある自治体の事例として、身寄りのない一人暮らしの高齢者らが死亡・火葬され、身元が判明しても遺骨の引き取りを拒否されるケースが増えていることをお伝えしました。その後、総務省の調査結果として、引き取り手のない「無縁遺骨」が全国の市区町村で約6万柱保管されていることが明らかになりました(2021年10月末時点)。約6万柱のうち、9割に当たる約5万4,000柱は、やはり身元が判明したものの「引き取り手が見つからない」「親族らが引き取りを拒否」という事情でした(残りの約1割は身元不明者だった)。
全国の公営墓地6割弱で「無縁墳墓等」が発生
また総務省は昨年9月、「墓地行政に関する調査‐公営墓地における無縁墳墓を中心として‐」の結果を発表。それによると公営墓地や納骨堂を運営する765市町村のうち445市町村(58.2%)で無縁墳墓等が発生し、その多くの自治体で使用者以外の縁故者を探すために必要な情報を把握できていない(縁故者の把握率2割未満が80.7%だった)ことも明らかになりました。無縁墳墓の発生は、公営墓地の荒廃や不法投棄の温床になるとの指摘もあり、樹木の伐採や墓石の倒伏を未然に防ぐ措置が必要で、そのための手間や費用も発生します。また縁故者情報を把握していなかったある自治体では、約1万区画の縁故者の承継意向を確認するのに約10年を要した事例もあるそうです(写真上=都立霊園で縁故者に呼び掛ける立て札)。
したくてもできない「無縁改葬」「墓石撤去」の実態
なお上記の無縁墳墓の調査で、無縁改葬後の対応についても調査しており、それによると、過去5年間に「無縁改葬や墓石撤去に着手した実績がある」との回答はわずか6.1%。「今後、無縁改葬の実施意向がある」との回答も低く22.1%でした。その(無縁改葬や墓石撤去をためらわざるを得ない)理由として「無縁改葬の縁故者調査結果だけでは、他に縁故者が存在する可能性がある」「墓石の保管場所が確保できない」「即時処分か一時保管か、またいつまで保管期間すべきか判断に迷っている(その判断基準を国が示してほしい)」といった意見もありました。
これらの問題を予防・解消するには、業界団体や地元組合などの協力を得ながら、自治体は縁故者情報の把握に努め、無縁改葬後の墓石の取扱い(保管期間や処分方法など)を早急に整理しておくことが必要となるでしょう。