2023.10.31
お墓選びで後悔したくない方必見!お墓選びの基礎知識を網羅的に解説
お墓のことをイチから知りたい方はぜひお読みください!
元気なうちにお墓について考えるのは難しいことかもしれませんが、いつかは大切な家族を見送り、きちんと供養するためのお墓を選ばなければならない日がやって来ます。また最近では、自分自身のお墓を自ら考えるという人も少なくありません。
しかし、お墓は一生に一度あるかないかの大きなお買い物です。いざお墓を選ぼうとしても、何をどこから考え、どのようなお墓を選ぶべきなのか分からないという人も少なくありません。家族の状況、故人さまへの想い、アクセスの良さやお墓の種類など、さまざまな要素の中から、もっとも自分たちが納得できるお墓を選びたいものです。
そんなあなたのために、この記事では「お墓の選び方の基礎知識」について網羅的に解説いたします。
どうしてお墓が必要なのか、まずはその役割や意義についてお伝えします。そして、継承墓や永代供養墓や樹木葬など、多様化するお墓についても詳しく解説した上で、お墓選びのポイントや注意点をお伝えし、お墓選びに必要な情報を幅広くご提供します。
お墓は、亡き人の冥福と自身の幸福を祈るための、いわば「幸せのシンボル」となるものです。だからこそ私たちは、お墓選びで後悔や失敗をしないでほしいと考え、そんな想いのもとにこの記事をまとめました。
どうぞ最後まで読み進めてみて下さい。あなたにとって、納得のいくお墓選びの一助になれば幸いです。
お墓選びの前に理解すべきこと
具体的なお墓の解説に入る前に、まずはどうしてお墓を建てるのか、そしてお墓を建てることであなたにどんなことがもたらされるのか、ということに想いを巡らせてほしいと思います。
お墓の役割と意味
亡き人を埋葬し、その場所に墓標を建てる。こうした埋葬行為は太古の昔から世界中で見ることのできる人間の習性です。他の動物と人間との違いは仲間を弔うことだとよく言われます。
お墓の形は、国や地域の風土、宗教、文化などによってさまざまですが、日本においては、長らく石のお墓による埋葬供養が行われてきました。どうして日本人は、石のお墓を建ててきたのでしょうか、そしてお墓を建てることで私たちにどんなものがもたらされるのでしょうか。考えられるのは次の3つです。
遺骨の埋葬
物理的な問題として、故人そのものである遺体や遺骨をそのままにしておくわけにはいきません。亡き人の身体が腐敗していく姿は、見るに堪えないほどの悲しみをこちらに与えますし、公衆衛生の観点からも望ましくありません。
現代の日本では、ほぼ100%に近い形で火葬が行われますが、その遺骨もいつまでも自宅に置いておくわけにはいきません。墓石であれ、樹木葬であれ、海洋散骨であれ、何らかの形で遺骨を埋葬することで、心に区切りがつき、安心感を得ることができます。
故人や先祖の供養
故人をただ自然に還すだけならば、山に埋める、川に流すなどすれば済む話です(実際にそうした形で供養する国や地域もあります)。
しかし日本では、埋葬地に墓石を建立するのが一般的です。これは、「ご先祖さま」という存在が、日本人の宗教観や死生観の中でとても大切にされているからです。
日本人は、特定の神さまや仏さまよりも、自分、両親、祖父母から連なるご先祖さまの方を身近に感じ、大切にしてきています。ご先祖さまとは、世代を超えた、命のバトンリレーによってできあがります。
つまり、このご先祖さまを供養し、敬いを持って感謝する対象も、世代を超えてそこにあり続けるものでなくてはなりません。こうした条件に対して見事に応えてくれる自然物が、石だったのです。石は、たとえ風化や劣化をしても、何百年、何千年とそこにい続けられる堅牢性を持っています。
お墓を建てて、名前を刻むことで、ご先祖さまの存在を記憶、定着させることができます。そしていつかは自分もご先祖さまとなり、その中で眠り、子孫に手を合わせてもらう。
日本文化は、こうした生命の連続性を大切にしていることから、供養の方法として最も多く墓石が用いられているのです。
命の絆のシンボル
お墓は屋外に建てられていますから、いつでも誰でもお参りできます。
「故人や先祖の供養」でお伝えしたように、お墓は世代を超えた命のバトンリレーのシンボルです。
また一方で、同時代に生きる人たちが、亡き人を偲ぶために手を合わせられる場所でもあります。
つまりお墓は、縦軸(故人や先祖)のつながりと、横軸(家族や親戚・友人)のつながりが交差する「命の絆のシンボル」と言えるのではないでしょうか。
お墓を建てることでもたらされるもの
ここまで見てきたように、亡き人の遺骨を自然に還し、そして故人や先祖に手を合わせ、そこから連なるさまざまなつながりを感じられる場所、それがお墓です。
では、このようなお墓を建てることで、あなたにどのようなことがもたらされるのでしょうか。
故人を安心して供養できる
お墓があれば、その中に埋葬、供養することで安心感を得られます。ずっと遺骨が家にあると、どことなく気持ちが落ち着かないものです。
実際に長らく自宅に置いていた遺骨をお墓に納めることで「ほっとした」「ようやく土に還せた」などと安堵するお客様の声は日常的に聞かれます。
遺骨をしかるべき場所に埋葬することが、故人さまにとっても、そしてご遺族にとっても、ひとつの区切りとなるのでしょう。
祈りの対象を持つことができる
祈りは、人が幸せを願うために行われる普遍的な行為です。目に見えない願いを、目に見えない神仏に祈る際、祈りの対象となるものを必要とします。代表的なものとして、神社の神さまやお寺の仏さまなどが挙げられます。神社やお寺は、いつでもだれでもお参りできる、いわば公共的な祈り空間です。しかし、親のため、家族のため、先祖のために建てられたお墓は、あなただけの個別の祈り空間と言えます。
先の方でもお伝えしましたが、日本人はご先祖様を大切にする文化を持っているので、だからこそ個別のお墓、家ごとのお墓が建てて、お墓参りすることで、ご先祖さまとつながり、幸せを感じてきたのです。
亡き人の冥福は私たちの幸福
ご先祖さまを身近に感じる日本人にとって、ご先祖さまと私たちはとても密接につながっています。親が子を大切に考えるように、先祖は子孫の幸せを願う。そして子の務めとして、親孝行をし、先祖供養をきちんとする。このような感覚を私たちはごく自然に受け入れています。
こうした日本人の死生観や先祖観は、中国や日本など、東アジアに広く普及している儒教の中で大切にされている「先祖祭祀」という前提のもとに成り立っています。そして、先祖祭祀はいまを生きる私たちと、亡き家族や先祖のつながりを基本とします。
亡き人やご先祖さまの冥福を祈るということは、そのまま自分自身の幸福を祈っていることに他なりません。ご先祖さまの名前の刻まれた墓石をきれいに拭くことで、自身の心も洗われる気がしますが、それも同じことではないでしょうか。
お墓を建てて、亡き人に会いに行き、手を合わせる。こうした素朴なお墓参りを通じて、あなた自身の心も、多幸感で満たされるものだと思います。
以上、ここまで、お墓の役割や意義、そしてお墓があなたに何をもたらしてくれるのかについてお伝えしてきました。
ここからは、いよいよ本格的にお墓の選び方や基礎知識について踏み込んでまいります。
お墓の種類
まずは、お墓にはどんな種類があるかを知っておきましょう。これまでは家ごとに墓石を建てるのが一般的でしたが、家族形態やライフスタイルが変化、多様化するのに合わせて、お墓もさまざまな形態のものが選ばれるようになっています。代表的なものを列挙します。
継承墓・家墓
いわゆる一般的に「お墓」という呼び方で認識されているお墓のことです。石のお墓であること、 ひとつの家族がひとつのお墓を受け継いでいくことが前提で作られており、「代々墓」や「一般墓」などとも呼ばれます。
合祀墓
家族ごとに使用するのではなく、異なった家族の複数の人の遺骨を同じ場所に埋葬することから「合祀墓」「共同墓」とも呼ばれます。あととりがいないなどの事情で、お墓を承継できない場合に選ばれ、霊園やお寺が永代にわたって供養してくれます。詳しくは「永代供養の基礎知識」をご覧ください。
樹木葬・自然葬
石のお墓を用いずに、遺骨を自然に還す葬法全体を指して「自然葬」と呼ばれます。その中で最近広く認知されてきた「樹木葬」とは、石のお墓ではなく、樹木を墓標としたタイプのお墓のことです。自然の里山の中で埋葬する「里山型」や、都市型霊園の中に設けられた「霊園型」に分類できます。実際には後者の霊園型が圧倒的に多く、樹木をシンボルとしつつも、遺骨を守るための空間(カロート)やモニュメントに石材を用いることも少なくありません。また、お墓を建てずに遺灰を海や山に撒く「散骨」も、自然葬の一形態と見なされています。詳しくは樹木葬・自然葬の基礎知識をご覧ください。
納骨堂(室内墓)
遺骨を納める納骨スペースが室内に設置されているタイプのお墓で、室内で快適にお墓参りができるお墓です。詳しくは納骨堂の基礎知識をご覧ください。
このように、ひとことに「お墓」といっても、昨今はさまざまなお墓の形があります。次章では、そんな多様化するお墓について、ひとつずつさらに詳しく深く掘り下げて解説していきます。
継承墓か永代供養か
お墓にさまざまな種類があるのは先ほどご覧いただいた通りですが、大きく分けると「継承墓」と「永代供養」の2種類があります。
継承墓は家族がお墓を受け継ぎ、ご先祖様を供養します。一方、永代供養は家族に代わって霊園やお寺が永代にわたり先祖の供養をしてくれます。継承墓に限らず、樹木葬や納骨堂を利用している場合も、お墓を引き継ぐ人やお参りする人がいなくなることは少なくありません。こうしたお墓の受け皿として、永代供養が選ばれています。
自分たちの手で亡き人やご先祖さまを供養する継承墓か、供養を霊園やお寺に一任する永代供養か。このセクションでは、それぞれのメリットとデメリットをご紹介したいと思います。
継承墓・家墓のメリットとデメリット
継承墓は、墓地や墓石が次世代に受け継がれていくのが大きな特徴です。具体的なメリットやデメリットを見ていきましょう。
継承墓・家墓のメリット
継承墓・家墓のメリット
- 家族の絆やルーツのシンボル
- 先祖がそこにいることを実感できる
- 子孫の経済的負担がない
メリット1 家族の絆やルーツのシンボル
継承墓は、「ご先祖さまがいるから私がいる」という大切なことを、その存在だけで私たちに示してくれます。墓石には、ご先祖さまや亡き人の名前などが刻まれています。お墓を代々承継することで、その家の歴史やルーツをたしかめて感じることができます。
メリット2 先祖がそこにいることを実感できる
継承墓は、ひとつのお墓でひとつの家族を供養するのが基本です。その家固有の個別のお墓だからこそ、お参りの際に自分の親や先祖に対して祈っている実感があります。また、お墓の中には亡き人やご先祖さまの遺骨が埋葬されています。合祀墓のように、ひとつのお墓で複数の人たちのお墓を埋葬するわけではないので、ダイレクトにご先祖さまとつながることができます。
メリット3 子孫の経済的負担がない
継承墓は、建てる時こそ費用がかかってしまいますが、一度建ててしまうとあとは数世代に渡ってお参りができるため、子孫に経済的な負担がかかりません。
継承墓・家墓のデメリット
一方で、家族形態やライフスタイルが多様化する昨今、継承墓が社会の実態そのものに合わなくなっているのも実情です。そうした観点から、継承墓のデメリットを取り上げます。
継承墓・家墓のデメリット
- 継承問題
- 維持管理
- 初期費用が大きい
デメリット1 継承問題
家族が離れて暮らしている場合や、単身者や子のない世帯の場合、現実的にお墓の継承が不可能です。継承者がいなくなると、そのお墓は無縁仏となり、誰も供養する人がいない状態となってしまいます。
しかしながら、最近では無縁になったお墓に埋葬されている遺骨を、合祀墓に移して永代供養してくれる霊園やお寺もあります。お墓の継承についてご心配な方は、霊園・お寺などに相談してみましょう。
デメリット2 維持管理
お墓参りにはお墓掃除がつきもので、墓石を拭いたり雑草を抜く営みもまた供養と考えられてきました。しかし、お参りの方の高齢化に加えて、子や孫が遠方に住んでいたり、子や孫がいない場合、お墓の維持管理がままならなくなることもあります。
最近では、お墓参りやお墓掃除の代行業者も増えており、こうしたサービスを活用しながらお墓を維持管理するのも方法のうちのひとつです。
デメリット3 初期費用が大きい
継承墓を建てるには、墓地の取得や墓石の建立などの費用が必要となります。
共同墓を利用する永代供養などに比べると、継承墓を建てる人自身にとっては、経済的に大きな負担となります。
永代供養のメリットとデメリット
永代供養とは、先祖の供養を霊園やお寺に代行してもらうことを指します。遺骨は合祀墓に埋葬されるのが基本です。合祀までの期間はさまざまで、主に次の3つのパターンが挙げられます。
-
遺骨を預けた時点で合祀する
-
一定期間骨壺のまま保管し、その後合祀する
-
個別のお墓が無縁になった時点で合祀する
また、仏壇の中で祀られる先祖の位牌を引き取ってくれるお寺も少なくありません。
永代供養にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
永代供養のメリット
永代供養のメリット
- 継承問題に悩む人の受け皿
- 合祀後は維持管理が不要
- 費用が安い
メリット1 継承問題に悩む人の受け皿
そもそも永代供養は、継承墓や樹木葬や納骨堂など、他の供養の方法との対立軸としてあるわけではありません。
継承墓や樹木葬や納骨堂は、基本的に自分たちでご先祖様の供養をするために設けられます。それに対して永代供養は、現実的に自分たちの手でご先祖さまの供養をできなくなった人たちが、お墓や遺骨を無縁化させないための受け皿と言えるでしょう。
永代供養であれば、子や孫が実家を出て遠方に暮らしている場合や、子供がおらず継承者が存在していない場合にも安心です。
メリット2 合祀後は維持管理が不要
永代供養として遺骨が合祀されたのちは、個別の継承墓がなくなるため、お墓そのものの維持管理が不要となります。
遠方に暮らしており、なかなかお墓参りに行けない人にとっても、お墓が荒れるなどの心配がなくなります。
メリット3 費用が安い
ひとつのお墓を複数の人で利用するため、個別の継承墓を新たに建てる場合に比べると、費用を抑えることができます。
ただし、継承墓は原則何体納骨しても費用はかかりませんが、永代供養の場合は納骨のたびに費用がかかります。
永代供養のデメリット
永代供養のデメリット
- 他の人と同じ場所に埋葬される
- 合祀された遺骨は取り出せない
- お参りの仕方に制限がある
デメリット1 他の人と同じ場所に埋葬される
永代供養墓では、ひとつのお墓の中に複数の人の遺骨が埋葬されます。継承墓のように、わが家のご先祖さまだけがいるわけではないので、そのことに違和感が生じるかもしれません。
デメリット2 合祀された遺骨は取り出せない
一度合祀した遺骨を取り出すことはできません。将来、子孫が継承墓を建てたとしても、その方の遺骨を新たなお墓に埋葬することは物理的に不可能です。
デメリット3 お参りの仕方に制限がある
永代供養では、共有の礼拝スペースで手を合わせます。お線香やローソク、お花や食べ物のお供えなど、合祀墓の形状や、霊園・お寺の方針によって、お参りの仕方に制限が生じることがあります。
自然葬とその種類
自然葬とは、従来のお墓に遺骨を納めるのではなく、遺骨や遺灰を自然の循環の中に回帰させようとする葬送のことです。明確な定義はありませんが、樹木葬や散骨などが、自然葬に含まれるものと考えられています。
樹木葬
樹木葬とは、石ではなく樹木を墓標としたお墓のことです。また最近では樹木と石材を併用した形のお墓や、石を墓標とした樹木葬もあります。
樹木葬は「里山型」と「霊園型」に分かれます。
里山型
自然に回帰するという意味では、まさに樹木葬という理念を実現した墓地ではありますが、全体的に見ると里山型の霊園は少数派です。里山を墓地にするための許認可を得ることの敷居の高さに加えて、都心部から遠い場所にあるなど、お墓参りに負担がかかるなどの理由が考えられます。
しかし、全体的から見れば一部とはいえ、
「自身の死後を自然の循環の中に回帰させたい」
「自然の草花の中で眠りたい」
「都会の喧騒を離れて静かで落ち着く場所に埋葬されたい」
…などと考える人たちからは、たとえ墓地が遠方でお参りしづらい場所であっても人気を集めています。
公園型
樹木葬と銘打っているものの、実際にはカロートや石碑などを併用しているところも少なくありません。
都市型霊園の中に設けられた樹木葬区画は、主に次の3つに分けられます。
合祀タイプ
シンボルツリーの下に、合祀(他の方々の遺骨とともに埋葬)する方式です。
集合タイプ
シンボルツリーのまわりに個別に遺骨を納められるカロートが配されています。礼拝は同じ場所でするものの、遺骨の埋葬は個別の場所で行われるのが特徴です。
個別タイプ
個別の区画が割り当てられ、1本の木の下に埋葬をします。礼拝も埋葬も、自分たちだけの墓地区画で行えます。
海洋葬(海洋散骨)
海洋葬とは、いわゆる散骨の一種で、パウダー状にした遺骨を海に撒く葬法のことです。従来の供養の方法では、お墓を建てたり、納骨堂を設けたりと、遺骨のある場所にお参りをしていましたが、海洋葬ではお墓を設けないのが一番の特徴です。
自然回帰志向や、子や孫に負担をかけたくないと考える方に選ばれていますが、実際に海洋葬をしている人はごく一部だと言われています。
認知だけが先行して、実施する人がそこまで多くないのは、そもそも散骨が法的にグレーな状態にあり、将来的にどのように位置づけられるかが不明な点、お参りする場所がないことに対する遺された人たちの違和感などが挙げられます。
空中葬・宇宙葬
最近では、自身の遺骨(厳密にはパウダー状にした遺灰)を空中で撒く、宇宙空間に放つなどの取り組みも見られます。故人の遺灰をカプセルに納めてロケット搭載し、宇宙空間に打ち上げるのです。
これまで、土に還す、川に流すなどの方法で遺体や遺骨を自然に還していましたが、時代が変わることで供養のあり方もさらに多様化していくのかもしれません。
納骨堂(室内墓)とその種類
納骨堂とは、寺院や霊園に設置されている納骨施設で「室内型のお墓」と言えるでしょう。
納骨堂の場合、室内に墓石を設置するのではなく、「納骨檀」と呼ばれるものが並び、その中に遺骨を納めます。
お寺が納骨壇を設置していることも多いことから法事とお参りが同時にできる、屋内なのでお参りや掃除の負担が軽減される、交通アクセスの利便性がよい、承継者がいなくなったあともそのまま永代供養に移行できるなどのメリットから、納骨堂を選ぶ人も少なくありません。
また、遺骨の取り出しや引越しが比較的容易なため、将来、ほかの地域に移り住む可能性や、継承墓を建てるまでの一時的な利用を考慮した「一時預かり」としての利用方法もあります。
納骨堂は、次のような形態に分類できます。
ロッカー型
ロッカー型の納骨堂は、それぞれに扉のついた納骨檀が縦横に積み上げられており、その中で骨壺を保管します。個々の区画は立方体に近い形状のものが多く、いわゆる「ロッカー」の形状を模したものです。
礼拝のかたちは、個別の扉の前でお参りできるタイプ、共有の祭壇ブースで手を合わせるタイプなど、納骨堂によってさまざまです。
仏壇型・墓石型
ロッカー型のように縦横に区画を区切るのではなく、縦一列をひとつの家で利用します。上段には、ご本尊や位牌を祀り、線香やローソク、お花などのお供えができ、まさに仏壇のように礼拝ができます。下段が遺骨の収容スペースになっており、こちらの骨壺を並べます。
また、一部の納骨堂では室内に墓石を並べているところもあります。
自動搬送型(室内墓)
新しい形の納骨堂として近年の注目を集めているのが、自動搬送型の納骨堂です。
従来の納骨堂と異なるのは、遺骨の保管スペースと参拝者の礼拝スペースが分けられている点です。お参りの人は、参拝ブースに到着すると、タッチパネルにカードをかざしてIDを読み込ませます。すると、バックヤードで保管されている遺骨がベルトコンベヤで自動的に運ばれてくるという仕組みです。
遺骨を安置するためのスペースが少なく済むため、東京や大阪など、土地不足が深刻な都心部で多く見られます。建物一棟を納骨堂として利用するため「マンション型」「ビル型」などとも呼ばれます。
墓地の種類
満足いく形でお墓を選ぶ上で、お墓の種類と合わせて知っておきたいのが、墓地の種類です。墓地も運営主体によって性格が異なりますのでそれぞれの特徴を押さえておきましょう。
公営霊園
公営霊園の人気は相対的に高く、それには次のような理由が挙げられます。
- 自治体が管理しているので、倒産や廃寺の心配がない
- 住民の税金が投下されているので、墓地の永代使用料が比較的安価
- 宗教宗派や、石材店に制限がない
しかし、人気が高いということは、逆に墓地区画の取得ハードルが高いことをも意味します。人気の霊園の場合、墓地を入手するための抽選会が行われますし、高い倍率を誇る区画もあります。
また、お墓のデザイン、寸法、遺骨の有無や居住地など、建立条件に制約があることも少なくありません。
民営霊園
- 公営霊園に比べて墓地区画を入手しやすい
- 市民・市民外関わらず、誰もが利用できる
- 利用者のニーズを汲み取った区画が多く見られる(樹木葬区画・墓じまい不要区画・ペットと入れる区画など)
かつては公営霊園に比べて費用が割高な印象でしたが、最近ではコンパクトな墓地、墓石のバリエーションが豊富で、総額で見ると公営墓地より安く済むことも少なくありません。
民営霊園の場合、墓石工事を行う石材店が指定されていることがほとんどです。墓石建立にかかる費用やデザインなどの提案力は石材店によってさまざまですが、民営霊園の場合は墓地に石材店が紐づけされているので、業者を自由に選ぶことができません。
寺院墓地
寺院墓地には主にふたつの種類があります。
檀家向けの寺院墓地
寺院墓地は、お寺の境内の中にお墓があることの安心感が得られます。また、法事や法要の際も、お寺へのお参りとお墓参りをあわせて行えます。
費用は、お寺によってさまざまです。「お寺は檀家のものだから」「普段のお布施で支えていただいているから」という理由で安価に設定しているお寺も少なくありませんし、地域の相場よりも高く設定しているお寺もあります。
檀家以外でも申し込める墓地
最近では、お寺とのつながりを持たない世帯も増えていることから、自分が希望するお寺の墓地を取得することもできます。継承墓区画に限らず、樹木葬、納骨堂、永代供養など、さまざまな選択肢から選べます。
また、お墓だけ購入して、檀家としての寺づきあいをしなくてよいお寺も少なくありません。購入後のお寺との付き合いなどは事前に確認しておきましょう。
共同墓地
共同墓地とは、地域の住民がともに管理運営し合う墓地のことです。自治会単位で管理しているケースが多いようです。
住民の住民による墓地ですから、区画費用は安価な傾向にあります。また、家からすぐそばに墓地があるので、お墓参りの負担が少ないのがメリットです。
共同墓地は基本的に役所や企業や寺院による管理があるわけではなく、地域住民たちが自分たちで管理運営しなければなりません(一部例外あり)。そのため、自治会によっては当番制で墓地管理委員を務めたり、年に数回の清掃作業に参加しなければなりません。
お墓の選び方、考慮すべきポイント
失敗しないお墓選びのためには、多くの要素を考慮する必要があります。ここでは主に考慮してほしい4つのポイントについて解説しています。
- ポイント1:経済的な要素
- ポイント2:墓地の立地・お参りへのしやすさ
- ポイント3:墓地の環境・設備サービス
- ポイント4:お墓のサイズ・デザイン
ポイント1 経済的要素
大切な亡き人やご先祖さまを供養するためのお墓ですから、誰もが立派なお墓、アクセスのよい立地を希望するものです。しかし、お墓の購入には高額な費用がかかるため、現実的な予算と向き合う必要もあります。
お墓にかかる費用は、主に次の3つが挙げられます。
- 墓地の価格
- 墓石とその設置費用
- 建立後の維持費
墓地の価格
まず考慮すべきは、墓地そのものの価格です。
墓地の価格相場は地域によって大きく異なるほか、立地(市街地か郊外か)、墓地の大きさ、景観、寺院墓地の場合はそのお寺の格式など、さまざまな要因によっても変動します。
墓石とその設置費用
どのようなお墓を建てるのか、その形状や使用する石種によっても費用は大きく異なります。
墓石に使用される石材は、国内外を見渡すと100を超える種類があり、金額も実にさまざまです。石材価格を決める要因も複数あり、石材そのものの品質、これまでの実績や市場での人気、産出量や流通量などが挙げられます。たとえば、国内産の最高級石材と、海外産の安価な石材とを比較すると10倍もの開きがあります。
こうした石材の単価と使用する石の量によっても費用が変動するのに加えて、石工による加工や文字彫刻、現場での基礎工事や据付工事などの費用が加算されます。
維持費
お墓を建てたあとにも、お墓参りやお墓を維持していくための費用が必要となります。
お墓参りの際にはお花やお線香などのお供え物を持参します。また、霊園・墓地の共用部分を維持管理するための年間管理料を納めなければなりません。
さらに、墓地の草抜き、墓石の清掃、劣化した箇所の修繕など、これらを専門業者に依頼することもできます。もしも依頼するのであれば、その費用もある程度考慮しておく必要があります。
ポイント2 墓地の立地・お参りのしやすさ
自宅から霊園へのアクセスのよさ、あるいは霊園内のどの区画にお墓を建てるかなど、墓地の立地やお参りのしやすさも、お墓選びの際の重要な要素のうちの一つです。
お参りの頻度と距離
最初に考えるべき点は、お墓参りの頻度と、自宅からの距離です。
家族や親族と離れて住んでいる場合や、故人や先祖の故郷あるいはルーツとなる場所であれば、遠方の霊園も選択肢に含まれるでしょう。
しかし、頻繁にお参りしたいのであれば、自宅から近い場所に墓地を選ぶのが望ましいです。
実際に自分たちがどのような形でお墓参りをするかを想像しながら、墓地を検討しましょう。
交通の利便性
自宅からの距離に加えて、お参りの際の交通手段も考慮に入れておきます。
公共交通機関を利用する場合、最寄りのバス停や駅から墓地までの距離や、お参りにかかる時間などを確認しておきます。送迎バスを運行している霊園ならより便利です。発着の駅やその頻度、一年中運行しているのか(盆彼岸など繁忙期のみ運行するケースもある)などをチェックしておきましょう。
車で訪れる場合には、墓地までの道路状況や駐車場の広さや台数についても確認しておきましょう。仮に駐車場があったとしても、お盆の時期になるとお墓参りの方が集中し、混雑も予想されます。そのようなケースに備えて、近隣にコインパーキングがあるかなども調べておくとより安心です。
送迎バスの運行サービスがある霊園であれば、平時はマイカーで、繁忙期は公共交通機関でお参りするなど、状況に応じてお参り方法を選択できます。
地形と移動のしやすさ
霊園内の地形と移動のしやすさも重要です。
霊園や墓地は山裾に造られていることも少なくありません。階段や坂道など、園内の移動にどれくらいの負担がかかるかを考慮しましょう。
特に自身が高齢になったり、足腰を弱めてしまうと、平坦で参道がしっかり整備されている墓地や、エレベーターやスロープが設けられている霊園の方がより望ましく感じられます。
また、霊園が広大であればあるほど、園内の移動距離を負担に感じることとなります。広大な霊園では、園内に複数の駐車場が設けられている場合も多いものの、駐車場から自身の墓地区画まで、どれくらいの距離を歩き、階段を上らなければならないかを、実際に歩いてみて確認しておきましょう。
必ずしも理想的な立地ばかりではないと思いますが、実際にお墓参りする時のことを想像しながら、墓地区画を検討してみてください。
みんなのお墓は地域や路線から選べます
日本最大級のお墓総合ポータルサイト「みんなのお墓」は、経済産業省認可の全国石製品協同組合が運営しています。
全国4,500件を超える霊園・墓地(2023年6月現在)から、墓地の立地・アクセスといった観点でまず候補を絞り込むのに役立ちます。
霊園・墓地を地域や鉄道路線から選択することができ、霊園の雰囲気を見るための写真も豊富に掲載しています。
より詳しい情報を知りたい霊園・墓地があれば、資料を一括請求していただくことも可能ですので、お墓選びにぜひお役立てください。
ポイント3 墓地の環境、設備、サービス
墓地の環境、あるいは霊園が提供している設備やサービスも、お墓参りの心地よさを左右する大切な要素です。
自然環境・周辺環境
実際に霊園を訪れたり、気になる墓地区画の前に立ってみた時にどのような印象を受けるか、その直感を大切しましょう。
自然豊かな静かな環境を好む人もいれば、市街地に近い利便性をよしと感じる人もいます。
また、手を合わせる方角の先にわが家が見下ろせる、墓地の区画番号が故人と縁のある番号であるなど、どの点に親しみを感じるかは人によってさまざまです。
静かな自然環境、落ち着く雰囲気、霊園への親近感などは、そのままお墓参り際の心地よさにつながります。だからこそ、予算やアクセスなどの合理性に加えて、現地に立った時の直感も大切なのです。
設備とサービス
墓地の設備やサービスも重要なチェックポイントです。
まずは、水場やトイレ、駐車場などの基本的な設備が整っているかを確認しましょう。まれに、こうした設備のない霊園もあります。
冷暖房完備の休憩所があれば、暑い夏や寒い冬でも快適にお参りできます。線香、ローソク、墓花などを販売する売店があるとなお便利で、スタッフ常駐の霊園であれば困った時にもすぐに対応してもらえるので安心です。
管理や清掃が行き届いているかどうかもチェックしておきたいところです。共用部分の清掃がきちんとなされている霊園だと安心してお墓参りができます。
その他、お墓参りやお墓掃除の代行サービスを提供している霊園もあります。
安全性
近年、セキュリティ意識の高い霊園・墓地も増えています。
管理者や霊園スタッフが常駐している霊園、お参りできる時間が決まっており時間外は閉門される墓地、監視カメラが24時間稼働している墓地などさまざまですが、このような防犯意識の高さが利用者に安心感を与えてくれます。
ポイント4 お墓のサイズ・デザイン
墓石も含めた「お墓」のサイズやデザインは、予算だけでなくお墓の継承にも大きく影響します。
近年ではお墓のデザインもさまざまで、伝統的な意匠にこだわらないオリジナルデザインも少なくありません。
適切なサイズの選択
将来、そのお墓がどのように活用されるのか、そのあり方を前提に、お墓のサイズを考えましょう。
もしも1人だけ、あるいは夫婦だけを埋葬するのでよいのであれば、コンパクトなものでも構いません。しかし、代々受け継いで家族全員を埋葬する継承墓にしたいのであれば、カロートのサイズを大きくし、それに比例して墓石全体のサイズも変わってきます。
霊園・墓地によっては希望のサイズの区画が用意されていないこともあります。まずはみんなのお墓で気になる墓地・霊園を検索し、詳しい情報は資料請求や、実際に墓地・霊園を訪れて検討することをお勧めします。
デザインの選択
個人墓や夫婦墓であれば、自分たちが希望するデザインを形にすればよいでしょう。しかし継承墓にするのであれば、万人に受け入れられやすいデザインをおすすめします。後者の場合、お墓は自分たちのものだけでなく、子孫たちのものでもあるからです。人によって好きなデザインはさまざまですし、時代によってトレンドも異なります。
その上で、石材は、角型、丸型、楕円型、曲線など、どのようなデザインにも加工でき、そこに彫刻される文字や図柄で個性を出すこともできます。
自分たちにどのようなデザインが望ましいのか、石材店と相談しながら進めていきましょう。
石材と耐久性
墓石に用いられる石材は国内外を合わせると300種類近くあると言われ、硬度、吸水性、艶、光沢、色調、成分の密度など実にさまざまです。
またそれによって費用にも大きな開きがあります。石材の過去の実績やブランドに加え、品質のよさ、採掘や運搬にかかるコスト、流通量などのさまざまな要因によって、石材それぞれの相場が決まってきます。
代々継承されていく予定のお墓であれば、できるだけ高品質で耐久性が高い石材を選ぶのが望ましい反面、予算とのバランスも大切です。
経済産業省公認「全国石製品協同組合」の信頼できる加盟店にご相談いただければ、確かな知識と豊富な経験によって質の高い石材をご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。
お墓選び・購入までの流れ
前章で、お墓選びのポイントについて押さえることができましたので、それらを踏まえて、お墓選び・購入までの流れについて解説いたします。
1.自分たちにとって望ましいお墓を考える
ここで大切なのは、費用や利便性だけではありません。お墓は亡き人やご先祖さまと向き合うことのできる大切な場ですから、供養の想いや満足感など、「心」の部分で納得できるかどうかの感覚も大切にしましょう。
2.ネットで情報収集
ネットによる霊園や墓地の検索は、経済産業省公認・全国石製品協同組合の運営する「みんなのお墓」が安心です。「エリア」+「お墓の種類」から、きっとあなたの希望する霊園が見つかります。どうぞお気軽にご活用ください。
3.現地見学
4.比較検討
5.契約~完成
墓石の場合は、希望のデザイン、石種、彫刻する文字や図案など、石材店との打合せを重ねてお墓を作り上げていきます。最終的にお墓の完成までに要する期間は契約から2~3か月です。
納骨堂の場合は、希望の区画を購入し、費用を支払うことでその区画を利用できます。また、永代供養の場合も、申込を済ませ、費用を納めます。あとは両者とも納骨式を執り行い、僧侶に読経供養を営んで頂きます。
まとめ
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。お墓の選び方について、網羅的に解説いたしました。
ここに書かれていることが、あなたのすてきなお墓選び・お墓つくりの一助になればと想い、祈りを込めて綴ってまいりました。
お墓は施主のためだけのものではありません。その中に眠る故人さまのため、そこから連なるたくさんのご先祖さまのため、そして私たちを取り囲む家族や親戚やご縁のあった方々のためのものでもあります。
だからこそ、自分一人で決めるのではなく、家族みんなで話し合いながら、自分たちにとってもっとも安心して、無理なくお参りできるお墓のかたちを考えてもらいたいものです。
そして、分からないこと、疑問に思うことがありましたら、いつでも私たち「みんなのお墓」にご相談下さい。
「みんなのお墓」は、経済産業省の認可団体である全国石製品協同組合(全石協)が監修する日本最大級のお墓総合ポータルサイトです。全国47都道府県の石材会社や関連会社が力をあわせて、あなたの幸せなお墓ライフをサポートいたします。