2024.06.03
謎を呼ぶ石碑「医師国家試験不合格」の真相
目次
グーグルマップで「史跡」として登録
普段の仕事や出張等の下調べでグーグルマップをよく見ますが、時々首を傾げてしまうことがあります。先日も岩手県一関市川崎町付近の地図を見ていて、「何? どういうこと?」と好奇心をくすぐられる情報が飛び込んできました。そこには何と「松井元哉 第113回医師国家試験 不合格発表閲覧之地」と書かれていました。しかも「史跡」マークまでしっかり付いています。そこにカーソルを合わせると、その文字が書かれた石板の写真が表示されました(写真上=筆者撮影)。確かに「合格」ではなく、「不合格」と書かれています。誰が、いつ、何の目的で建てたのか、疑問は膨らむばかり。早速調べてみると、すでにインターネット上で話題となり、全国紙やNHKの報道番組でも取り上げられ、オンライン配信されていました。
「不合格」の石碑を建てた理由とは…
この石碑は奈良県立医科大学付属病院に勤める30代の男性医師が建てたものでした。記事によると、松井さんは10年ほど前、奈良県立医科大学医学部に合格。在学中は自ら立ち上げたツーリングサイクルの活動に没頭し、しっかり準備できないまま医師国家試験に挑んだとのこと。自己採点で「合格する確率は半々」でしたが、結果を待たず学生最後のツーリングへ出発。そして発表当日、スマホで「不合格」を知ったのがあの場所でした。それから奮起し、1年後に合格すると、後輩たちと「あの場所」を再訪することになり、いたずら心と笑いを取るため、松井さんは「不合格閲覧之地」の標を建てることを思いつき、仲間たちと木の板で制作し建てた(撮影後、持ち帰った)そうです。その後2年の研修期間を終えて現在の付属病院に配属されますが、仲間たちと再び東北を巡る旅行が企画され、「そこに石碑が立っていたら、かなり面白いんじゃないか」と、地元の看板屋や石材店の協力(地権者の許可まで取ってくれた)を得て、あの碑が建てられ、さらに「史跡」として登録されたということです(費用10万円は、不合格の発表を一緒に見た同級生が半分負担してくれた)。
あってもいい「当事者にしかわからない」私的な石碑
石碑は本来、個人・団体の名誉や功績を称えて建てるものですが、(他人の迷惑にならず、合法的であれば)こういう「当事者にしかわからない」私的な石碑があってもいいんですね。自宅の敷地内(玄関先や庭など)や室内に飾れるミニ石碑や記念碑をつくってみても面白いかも知れません。