2022.11.18
お釈迦様が悟りを開いた記念法要「成道会」
目次
灌仏会、涅槃会とともに「三仏会」に
2018年4月4日付けの本コラムで、お釈迦様の誕生を祝う仏教行事「灌仏会(かんぶつえ)」(4月8日)を取り上げましたが、今回紹介するのは、お釈迦様がインド・ブッダガヤの菩提樹(写真上)の下で悟りを開いたことを記念して営まれる法要「成道会(じょうどうえ)」(12月8日)についてです。お釈迦様の命日にその遺徳を追慕して営まれる法要「涅槃会(ねはんえ)」(2月15日)と、前述の灌仏会とともに「三仏会」と称され、釈迦の三大法会として重んじられています。
禅宗寺院では、8日間にわたって不眠不休の座禅も
禅宗の寺院では、「臘八会(ろうはちえ)」または「臘八接心」と言って(臘八は、臘月〔12月〕8日のこと)、12月1日~8日朝まで不眠不休で座禅に励みますが、この間は結跏趺坐(けっかふざ=足の甲を交差させて、反対の足の太ももの上に乗せる座法)したまま睡眠を執るそうです。日本で唯一、お釈迦様の真舎利(遺骨)を安置する覚王山日泰寺(名古屋市千種区)では、法要後に座禅、喫茶(お茶を飲むこと)、喫粥(きっしゅく。お粥を食べること)が行なわれます。余談ながら、日本初の喫茶店は、黄檗宗の僧で「煎茶の中興の祖」とされる高遊外売茶翁(ばいさおう)が1735(享保20)年に京都・東山に開いた茶亭・通仙亭だと言われています。
禅問答から生まれた「お粥」エピソード
さらに、トリビア(雑学、豆知識)をもう一つ、仏教の辻説法で「喫粥了(「お粥を食べ終わりました」という意味)という表現がありますが、これは中国禅僧における最高峰の高僧、趙州従諗(じょうしゅうじゅうしん)と新米修行僧の禅問答から生まれたものです。修行僧が趙州和尚に駆け寄り「私は修行を始めたばかりですが、何か教えてもらえませんか?」と質問すると、和尚はこう返します。和尚「朝のお粥は食べたかね?」、修行僧「はい、頂きました!」、和尚「それでは器を洗いなさい」、修行僧「なるほど!」というものです。つまり、お粥を食べるという行為の中には、作る、食べる、片付けるという一連の流れがあり、「その当たり前のことを当たり前にやりなさい。その一連の流れこそが修行である」という意味だそうです(神戸大倉山・楠寺瑠璃光苑「ラピス和尚」がパーソナリティーを務めるラジオ番組より)。煩悩まみれの俗人が日々実践するのはなかなか難しいことですが、せめてお墓やお仏壇の前でそのことを思い出して戒めにしたいものです。