2022.04.29
寺院墓地とは?費用や檀家制度などを解説します
目次
日本には、7万件以上の仏教寺院が存在します。7万件と聞いても、数字だけではなかなかピンと来ないかもしれません。では、コンビニよりも多い件数と聞くといかがでしょう。その意外な数の多さに驚かされますね。
敬虔な仏教徒の方を除けば、普段の生活を送るうえで寺院に立ち寄る場面は、そう多くはありません。しかし初詣や七五三などの機会に、お寺の境内へ足を踏み入れた経験が幾度かあるという方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
最近では演奏会やカフェを開くお寺などもあり、仏教徒以外の方でも気軽に寺院を訪れることができるようになりました。そんな折、境内で辺りを見回してみると、敷地内の一角にお墓が立ち並んでいるのを見かけることがあるかもしれません。そのような寺院の境内にある墓地のことを、一般的に寺院墓地と呼んでいます。
今回の記事ではこの寺院墓地にスポットをあて、購入時の注意点やメリット・デメリットをご紹介して参ります。
お墓の購入を検討されている方や、公営・民間の霊園との違いを知りたい方のために役立つ情報が満載ですので、ぜひお役立て下さい。
寺院墓地とは?各宗派のお寺が運営・管理する墓地
先述したように、寺院墓地とはお寺の境内に設けられた墓地のことを指します。運営や管理は、主に寺院のご住職によって行われます。
寺院墓地にお墓を建てると、お寺と交流する機会が増え、自然にご住職との深い繋がりを持つことができます。これは公営や民間などの霊園には見られない、寺院墓地の大きな特徴のひとつですね。
他にも、寺院墓地には様々な特色が存在します。メリットだけでなくデメリットも幾つかありますので、寺院墓地でお墓を考えている方は、自分にとって本当にその選択が適しているのかどうかを慎重に判断しましょう。
寺院墓地のメリット
寺院墓地にお墓を持つと、公営や民間の霊園にはない幾つかのメリットを享受できます。そのメリットとしては、主に以下の3つのものが挙げられます。
●葬儀・法要・供養などをお寺に任せることができる
●手厚い供養をしてもらえる
●交通のアクセスが良いお寺が多い
各項目を、以下に解説いたします。
葬儀・法要・供養などをお寺に任せることができる
葬儀や法要の手配は、慣れていない方にとっては難しいものです。ですが寺院墓地にお墓を持ち、普段からお寺との交流があれば、ある程度のことをご住職にお任せすることができます。
もちろん準備の全てをご住職に委ねるわけにはいきません。しかし仏事を依頼する寺院を自分で探し、ご住職との打ち合わせをいちから始めなければならないことに比べると、施主としての負担はぐっと減ることでしょう。
また葬儀のマナーや法要で気を付けるべき点などをご住職に尋ねることで、手はずを万全に整えておくことも可能です。うっかり忘れてしまいがちな忌日法要や年忌法要などの日取りについても、事前に予定をお知らせ頂けるようなご住職であれば更に安心できますね。
手厚い供養をしてもらえる
寺院墓地は、普段からお寺を支えてくれている檀家のために、寺院側が境内に用意している墓地となります。ですので寺院墓地にお墓を建てると、ご住職からの手厚い供養が期待できますね。最近では檀家にならなくてもお墓を持てる寺院墓地が増えてきており、檀家でない方や檀家になりたくない方にとっては、墓地の選択肢が広がりました。
また、本堂を利用しての法要や命日の墓前供養などを、いつもの見知ったご住職へ気軽に依頼することができるという点も、他の墓地形態ではなかなか見られない寺院墓地特有の良さと言えるでしょう。毎朝の読経が本堂から届く場所にあり、常にご住職がそばにいらっしゃる安心感も相まって、こと故人の供養という点において寺院墓地は最適な環境にあるのです。
交通のアクセスが良いお寺が多い
寺院墓地は市街地や住宅街にも多く存在し、郊外に位置することの多い公営や民営の墓地に比べて交通のアクセスが良い傾向にあります。場合によっては、自宅から歩いて行けるような距離に墓地をみつけることができるかもしれません。
頻繁にお墓へ出向きたい方や、お参りに費やす時間をあまり多く割けない方にとっては、魅力的な選択肢となりますね。また境内には大きな墓地を作ることが難しく、寺院墓地は小規模なものが主流です。お盆やお彼岸などの時期であっても、周辺の道路が混雑したり、お参りに待ち時間が発生するといった問題が起こりにくいのも、規模の小さい寺院墓地ならではのメリットでしょう。
寺院墓地のデメリット
寺院墓地でお墓を持つにあたっては、メリットだけでなくデメリットも存在します。場合によってはお墓を建てること自体ができないケースもあるので、寺院墓地をお考えの方はそれらの点を事前にチェックしておきましょう。
寺院墓地の主なデメリットは以下の3点です。
●石材店が指定されている場合がある
●宗教・宗派が限定されることがある
●檀家になった場合は別途費用が発生する
以下、順にご説明いたします。
石材店が指定されている場合がある
寺院墓地でお墓を建てる際、墓石の製作や据付工事を依頼する石材店が指定されている場合があります。これは「指定石材店制度」と呼ばれるもので、石碑の品質や工事の水準が一定以上のレベルをクリアしている石材店のみが寺院からの許可を受け、墓地内でお墓を建てることができるという仕組みです。
お墓を購入する側からすると、石材店を自由に選べないのは不条理に思えてしまうかもしれません。ですが寺院側の立場から見た場合、見知らぬ業者にも建墓の許可を与えてしまうと、雑な工事による質の悪いお墓を建てられてしまうかもしれない、というリスクを背負ってしまうことになるのです。自分のお寺の敷地内でそういった事態が起こっては困りもの、とご住職が考えるのも、もっともなことですね。
「自分の知っている石材店にお願いしたい」「複数の石材店に相見積もりを取りたい」といった要望を叶えたい場合には、指定石材店制度のない寺院墓地を探してみましょう。
宗教・宗派が限定されることがある
寺院墓地によっては、宗教や宗派の制限が課せられている場合があります。寺院と同じ宗派でないとお墓を建てられなかったり、他宗派でも仏教徒であれば大丈夫だったりと、その制限は墓地によって様々です。
寺院墓地での建墓を検討する際には、まず条件を満たしているかどうかを確認するところから始めましょう。そのためには、自分の家が信奉する宗教と宗派をしっかり把握しておかなければなりません。浄土宗と浄土真宗など、間違えやすい事柄には特に注意が必要です。
もちろん宗派制限が一切ないという墓地であれば、そういった心配は不要となります。
檀家になった場合は別途費用が発生する
檀家になることが墓地にお墓を建てる条件、という寺院墓地も多くみられます。その場合には、檀家としての寄付や護持会費など、お墓とは別の費用が必要となります。また費用面だけでなく、各種行事への参加やお手伝いなどもしなければなりません。
これだけを聞くと、「そんな横暴な」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これにはきちんとした理由があります。そもそも寺院墓地とは基本的に、普段からお寺を支えてくれている檀家たちのために用意されているものなのです。加えて、境内の空いたスペースに作られていることから、決して広い面積を持ち合わせていません。限られた区画数しかない墓地を広く一般に開放することによって、檀家以外のお墓で埋まってしまっては、本末転倒な話となってしまいますよね。そのような事態を防ぐための措置というわけなのです。
寺院墓地でお墓を建てる際・建てた後にかかる費用
では実際に寺院墓地でお墓を建てるには、どのような費用が必要となるのでしょうか。主なものとしては、以下の4項目が挙げられます。
●永代使用料
●管理料
●墓石代
●檀家として必要な費用
それぞれを、以下に詳しく解説してまいります。
永代使用料
永代使用料とは、墓石を建てるための墓地を購入する費用のことを言います。簡単に言いかえると、墓地代のことですね。ただし日本の法律では墓地を個人所有することが認められていないので、その費用を支払ったとしても墓地は自分のものにはならないという点には注意が必要です。
先ほどは「墓地を購入する」と表現しましたが、実際には墓地の所有者になるのではなく、「永代にわたり、この土地を墓地として使用する権利(永代使用権)」を取得するものとお考え下さい。つまり自分の所有物ではないので、墓地が不要になったとしても、他人への譲渡や転売といった行為はできないのです。墓地を手放す際には、永代使用権を墓地の管理者へ返納するという形で行います。
永代使用料の金額は墓地の広さや立地等によって変わりますが、一区画あたり30万円~200万円ほどが相場となります。
管理料
墓地を確保すると、定期的な管理料(維持費)の支払いが発生します。管理料は主に、通路や水場などを整備したり、墓地内の共用部を清掃するための費用として使用されます。マンション住まいの方が月々に支払う管理費のようなものですね。
ただ墓地の管理料は毎月の支払いではなく、一年ごと、あるいは数年分をまとめて請求されるケースが一般的で、その相場は年間あたり5千円~2万円ほどの金額となります。
墓石代
墓石を建てる際にも、その費用が必要となります。これには石碑本体の金額だけでなく、墓地を囲う巻石(境界石・外柵)の製作や各種文字彫刻にかかる費用に加えて、設置工事費なども含まれます。
墓石の大きさや石質によって金額は大きく左右されますが、おおよそ50万円~300万円ほどとみておきましょう。
檀家として必要な費用
墓地の取得時にその寺院へ入檀した場合は、檀家としての費用も別途かかります。主に以下の4点がその内容となります。
●入檀料
●離檀料
●寄付金
●護持会費(護寺費)
ではそれぞれの詳細を見てまいりましょう。
入檀とは? 特定のお寺の檀家になること。
入檀料
檀家になる際に、寺院へ渡すお礼金のことを入檀料と言います。相場としては3~20万円ほどになります。檀家規則によって額が定められている場合は、それに従います。
なかには不要の寺院もありますが、入檀料は檀家側からの気持ちを表すものなので、渡したいのであれば用意しても構いません。
ただし、ご住職が固辞されているのに無理やり渡すのは逆に失礼に当たりますので、気を付けましょう。
寄付金
老朽化した設備の改修や新たな施設の設置など、大きな資金が必要となる取り組みを寺院が行う際には、寄付を求められることがあります。その工事の規模によって寄付金の額も変わりますが、多くの場合は「一口あたり◯◯万円」という感じで目安が示されます。
もし幾ら寄付すればよいのか分からない場合は、檀家総代に相談してみると良いでしょう。
檀家総代とは? 檀家を代表し、ご住職と各檀家との間を取り持つ立場の方
護持会費(護寺費)
檀家になると、定期的な護持会費の支払いが必要になります。護持会費の考え方は寺院によって異なり、境内墓地にお墓を持っていない場合は支払い不要というケースもあるので、詳しくは檀家規則を確認してみましょう。
年間あたり5千円~3万円が目安となります。
檀家を離れる際にかかる離檀料
将来、引っ越しや改宗を機に檀家を離れることになった場合は、それまでお世話になったお礼として、ご住職へお渡しする離檀料が必要となります。入檀料と同じく3万円~20万円が相場ですが、檀家規則に額の表記があればそれに従います。
最近では少なくなりましたが、過去には数百万円といったような高額の離散料を請求されるケースが稀に見られました。もし法外な金額を要求されたとしても、言われた額をそのまま支払う必要はありません。あくまでも自分のできる範囲で、感謝の気持ちを包むようにすれば大丈夫です。
檀家として必要な費用以外に公営霊園・民間霊園と大きな差はない
上の章では、寺院墓地にお墓を建てる際にかかる費用を説明いたしました。では公営や民間の霊園にお墓を持つ場合は、どのような違いがあるのでしょうか。
霊園によって細かい相違点は存在しますが、公営・民間ともに永代使用料と管理料・墓石代が必要な点は同じです。つまり檀家として必要な出費以外は、同様の費用がかかってくるということになります。もちろんその金額には違いが表れますが、それ以外の面については檀家として必要な費用の有無のみということになるのですね。
墓地に関するよくある質問
ではここからは、墓地についてのよくある質問にお答えしてまいります。同様の疑問をお持ちの方への参考になれば幸いです。
Q. 公営霊園にはどういったメリット・デメリットがありますか?
各地方の自治体が経営している墓地のことを、公営霊園と言います。また共同墓地と呼ばれる、地域住民が自主的に運営する墓地も、公営霊園のひとつに数えられます。
そのような公営霊園には、いったいどのような特徴があるのでしょうか。もちろん例外はありますが、主に以下のようなメリットとデメリットが挙げられます。
メリット
●墓地単価が安い傾向にある
●宗旨・宗派を問わず購入できる
●経営主体が公的なものであるという安心感
デメリット
●募集時期以外は申し込めない場合がある
●当該地域の居住歴や遺骨の所持など、資格要件を満たしていることが必要な場合も
●永代供養墓や樹木葬などはあまり見られず、墓地の広さも選択肢が少ない
公営霊園を検討する際には、特に「募集時期」と「資格要件」に注意が必要です。まず役所や地域の石材店などへ連絡を取り、募集要項の詳細を聞くところから始めてみましょう。
Q. 寺院墓地でも共同墓地はありますか?
共同墓がある寺院墓地は、多く存在します。その目的によって共同墓にも幾つかの種類があり、寺院墓地で主に見られるのは「合祀墓」になります。無縁となってしまった遺骨を納めたり、お墓を持たない方の納骨先として選ばれるお墓のことですね。
合祀墓は永代供養が付いているものがほとんどなので、供養という面において不安はありません。ただし合祀墓では遺骨同士が混ざり合ってしまうため、いちど納骨してしまうと、二度と遺骨を取り出せなくなるという点には気を付ける必要があります。
今後遺骨を別の場所に改葬する可能性が無いかどうかを考え、慎重に判断するようにしましょう。
また、共同墓に似た語句として「共同墓地」という言葉がありますが、意味が異なりますので注意しましょう。共同墓地とは、地域の自治会や墓地の所有者が持ち回りで管理・運営している墓地のことを指して使う言葉になります。
共同墓とは? 血縁関係にない複数の遺骨を同じ納骨室に納めるタイプのお墓のことを指します
最後に
今回は寺院墓地に関する情報をお届けしました。
寺院にお墓を建てるということは、同時にお寺との繋がりを持つということでもあります。故人を供養するにあたって寺院のご住職を頼ることができるのは、非常に心強いですね。
いまお墓を考えている方は、いちどお散歩がてら近所のお寺を巡ってみてはいかがでしょうか。もしかしたら、思いがけない寺院墓地との出会いがあるかもしれません。