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2024.10.24

八潮市域の葬送の文化史を知る企画展「あの世」

目次

「あの世」について考えることが多いお盆~秋彼岸に開催

第51回企画展「あの世-葬送儀礼と死生観-」(写真上)がお盆前の8月10日から秋彼岸明けの9月29日まで、埼玉県の八潮市立資料館で開催されました。本展は以下の3章で構成。第1章「あの世へ送り出す」では、八潮市域における信仰と葬儀、村葬を取り上げ、江戸時代のキリシタン禁圧策で庶民に寺院への帰属を義務付けた『宗門人別帳』(弘化5〔1848〕年)のほか、5戸の農家で(年貢や治安維持などの)連帯責任を負わせたことを示す『五人組帳』(文久2〔1862〕年)、香典帳(明治34〔1901〕年)など。第2章「思い描くあの世」では、六道輪廻や浄土思想にスポットを当て、当地の寺院に伝わる『閻魔天曼荼羅』(観音寺蔵)、三途の川のほとりに住む鬼・奪衣婆像(清勝院管理・阿弥陀堂蔵)、八大地獄の恐ろしさを文章と挿絵で紹介した『和字絵入往生要集』(天保年間)など。第3章「あの世の人を想う」では、火葬・土葬から四十九日に至る葬送儀礼の解説とともに『十王図』(宝永7〔1710〕年、専稱寺蔵)、『十三仏掛軸』(清勝院、普門寺蔵)などを展示し、現代ではあまり見られなくなった盆行事の写真パネルなどが紹介されました。

最終日に「近代皇室葬儀と八潮」テーマの公開講座

本展の最終日には「近代皇室葬儀と八潮-国家の葬儀と自治体の対応-」と題して同館・文書保存専門員による公開講座も開催されました。はじめに皇室葬儀と、天皇・太皇太后・皇太后・皇后の喪「大喪」の意義などについて説明があり、英照皇太后(孝明天皇の准后)及び明治天皇、昭憲皇太后(明治天皇の皇后)、大正天皇それぞれの大喪のようすと、当時の行政(南埼玉郡、潮止村)にそれがどう伝わり、それぞれの長がどう対応したのか当時の資料を交えて説明しました。

地域に伝わる葬送の歴史・文化を知る貴重な機会に

こうした重い(しかし重要な)テーマの企画展が公共施設の主催で開催されるのは珍しいことではないでしょうか。いずれも地域に伝わる葬送の歴史・文化を知る貴重かつ興味深い内容で、同館が運営するデジタルアーカイブの古文書データベースでその一部を公開するなど(検索キーワードに「あの世」を入力すると一覧表示される)、昭和40年生まれの筆者にとってもよい学びの機会となりました。本コラムの読者で企画展を担当されている方がいらっしゃれば、一度検討してみてはいかがでしょうか。