2024.02.22
「お墓(墓塔)」を別の視点で考えてみると…
目次
思わずホッコリ……石仏写真展へ
日本石仏協会(川野明正会長)が主催する2024年石仏写真展が1月中旬、東京のJCIIフォトサロン(東京都千代田区)で開催されました(写真上)。同協会は1977年に設立された石仏愛好家の集まりで、首都圏を中心に約300名の会員で構成。機関誌『日本の石仏』の発行(年3回)のほか、石仏談話室(毎月1回)や石仏見学会(随時)、石仏公開講座(年1回)など活発に活動されています。本写真展(年1回)もその一つで、会員が全国各地で撮影した石仏の写真91点が展示されました。「何百年の風雪に耐えた個性豊かな石仏と、それを取り巻く自然の美しさの魅力に溢れた作品です」と出展者の挨拶文にあるように、思わずホッコリするような、心温まる素敵な作品ばかりでした。
「お墓(墓塔)=石仏」という視点で考えてみよう
石仏というと、観音さまやお地蔵さまなど石造りの仏像をイメージされる方が多いと思いますが、『日本石仏事典』(雄山閣出版)では、像容・信仰・形態の3つの部に分けて、墓塔や鳥居、狛犬、道標、力石、石橋、敷石なども掲載しています。仏教には「山川草木悉皆成仏」「一切衆生悉有仏性」という教えがあり、「有機・無機を問わず、動植物や自然を含む万物すべてが仏になり得る」と説いていますが、それと同じように墓塔は仏塔=石仏でもあるのです。
つまり「墓じまい」するということは……
前回の本コラムで、2022(令和4)年度の改葬件数(墓じまい)が過去最多だったことを紹介しました。繰り返しになりますが、改葬の理由はさまざまで、「身寄りがなく、承継者もいない」「高齢や病気、あるいは実家が遠方にあるため、お参りに行けない」「年金暮らしで経済的に苦しい」など(本意ではないが)やむを得ない理由で仕方なく墓じまいされる方もいらっしゃいます。しかし、安易な動機や利己的な考えで墓じまいした結果、後悔したり、トラブルになることもあります。よくあるのが、「負担や迷惑をかけたくない」として、承継者となる子供や身内に相談せずに勝手に決めてしまうケース。子供が将来「お墓は必要」と判断したら、再び買い直さなければならないし、その間、お墓参りする機会(=徳を積む権利)を奪ってしまうことになるのです。前述のとおり、墓塔=石仏と考えれば、墓じまい=石仏じまい、となります。個人的な損得や価値観だけで安易に結論を出さず、慎重に判断してほしいものです。