2024.02.15
新聞報道「墓じまい=改葬」に対する考察
目次
過去最多だった2022(令和4)年度の改葬件数
厚生労働省がまとめた衛生行政報告例によると、2022(令和4)年度の改葬件数は前年度より3万2,000件余り多い15万1,076件でした。1997(平成9)年度に統計を開始して以来、2019(令和元)年度の12万4,346件が最多でしたが、それを大きく上回り過去最多となりました。改葬件数は元々増加傾向にありましたが、20-21年度はコロナ禍の影響で減少したため、その反動が22年度に集中したものと思われます(写真上=改葬等により撤去された墓石)。
統計結果が「墓じまい」を後押しする危険性も
この話題は、朝日新聞にも「墓じまい 過去最多」という見出しで掲載されました。記事の書き出しは「供養の方法を見直し、墓石を撤去する『墓じまい』(改葬)が…」となっていますが、見出しだけを読むと、墓じまい推進派が主張する「お墓=墓参や維持・管理、お寺との付き合いが大変(面倒)」というネガティブな理由を想像し、その解決策としていま話題の墓じまい(改葬)=過去最多=社会全体が公認(賢い選択)=散骨や手元供養、あるいは(管理が楽で、末永く供養までしてくれる)永代供養墓を選べば、頻繁に墓参する必要なし(=ある種の「供養の放棄」)=知らない、やらない人は損=一刻も早くやるべき――と自分に都合よく解釈する人もいるのではないでしょうか。もちろん、(本意ではないものの)「身寄りのない単身者で、承継者がいないから」「高齢・病気等でお参りに行けないから」「年金暮らしで経済的に苦しいから」など、やむを得ない理由で仕方なく墓じまいされる方もいらっしゃいます。
実態を反映していない不正確な改葬件数
また記事では、「管理する人がいなくなった『無縁墓』を行政が撤去したケースは、全国で3,414件だった」と報じていますが、それ以外の寺院墓地や民間霊園、共同墓地等で無縁墓として改葬された件数が正確に反映されていない可能性があります。なぜなら、厚労省は「同一墓地内での改葬は、改葬許可が必要」との見解を示していますが、自治体によって「不要」としているケースがあるからです。さらに言えば、「墓じまいに伴って取り出した焼骨を自宅に安置したり散骨する場合、改葬許可は必要ない」というのが厚労省の見解ですので、そうしたケースは実数の把握ができていないことになります。それが統計としての評価や分析にどの程度影響するのか分かりませんが、そうしたことも念頭に入れて記事を読む必要がありそうです。