2022.01.31
先立った友人Tとの不思議な体験
目次
突然知らされた大学時代の友人Tの訃報
昨年11月の夜、大学時代の友人から突然電話があった。「Tが亡くなった…」。それは同じサークル仲間Tのことだった。成績優秀、スポーツ万能のTは卒業後、大手の有名企業に就職し、同じサークルの後輩と結婚した。そのTが単身赴任中の大阪で胸が苦しくなり、東京で暮らす奥さんに電話するが、そのまま意識を失い、会話が途絶えてしまう。奥さんは警察に連絡し安否確認を依頼するが、手遅れだったという。Tは数日後、大阪で荼毘に付され、お骨の状態で実家に戻ってきた。翌週末、都内で葬儀が営まれ、サークル時代の先輩・後輩ともども懐かしい顔ぶれが集まった。式場内には、家族やペットと一緒に撮った写真のほか、サークル仲間で当時着ていたお揃いのウインドブレーカー(卒業時、私がTの奥さんに譲ったもの)なども飾られていた。学生時代の懐かしい思い出が次々と蘇ってきた。祭壇上のTの遺影はやや硬い表情に見えたが、実直で人情深く、誰からも好かれる彼の性格がそのまま表れていた。
仕事帰りの電車で見かけた男性は誰だったのか
実はTが亡くなる1ヵ月くらい前に不思議な体験をしている。仕事帰りに飛び乗った電車にTとそっくりの男性が目の前に座っていたのだ。何かを考え込むような表情といい、Tの癖だった爪を噛むような仕草まで、見れば見るほどそっくりだった。余りにも似ていたのでつい凝視してしまったが、相手は一向に気づかない。そうこうするうちに下車駅に到着し、「この時間に、この路線を利用するはずがないし、他人の空似なのかも知れない」と、声を掛けずに降りてしまった。しかし、いま思えば、あれはTだったような気がする。「あの時、声を掛ければよかった」と今更ながら後悔した。
お墓参りでの再会を期待して
Tが亡くなって間もなく3ヵ月になる。年末に喪中ハガキが届いたので、当然ながらTからの年賀状はなかった。それによってTの死が現実であることを否応なく認識させられた。四十九日の法要は無事終わったのだろうか、もう納骨は済んだのだろうか。そのうちお墓参りに行って、直接本人に聞いてみたい。「あの時、目の前にいたのはTだったよな」。ジョークが好きだった彼が、恥ずかしそうに頷く姿が想像できた。