2025.04.21
喪失と再生を描いた感動作『骨なし灯籠』東京公開へ
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当初2週間の予定を大幅延長し21週ロングランを達成
昨年3月、熊本のミニシアターで公開され、その評判が口コミで広がり、当初予定していた2週間を大幅に延長し、21週ロングランという異例の記録を達成した感動映画『骨なし灯籠』(木庭撫子監督)=写真上ポスター。海外の映画祭でも高い評価を得ており、カナダの第18回トロント国際女性映画祭で最優秀初監督賞、アメリカのロサンゼルス映画賞(October2023)でも最優秀初監督賞・予告編賞・俳優特別賞(水津聡)を受賞。その話題作が来月5~6月にかけて東京でも上映されることになりました。木庭監督は、ドラマ『北の国から』などの代表作で知られる脚本家・倉本聰主宰の富良野塾の出身で、本作が初監督となります。
タイトルから「人骨と何か関係があるのか」と思いきや…
本作は、妻に先立たれ深い喪失感を抱えた主人公が、死に場所を求めてたどり着いた温泉地で人々と触れ合ううちに徐々に心の傷が癒され再生するまでを描いたグリーフケアの物語。舞台は熊本豊前街道の温泉地・山鹿で、元美術教師の主人公が祭りのポスターに描かれた灯籠娘に妻・ゆかりの面影を見たことがきっかけで、灯籠師の見習いとして働き始めるというストーリー展開になっています。タイトル『骨なし灯籠』」は、熊本県山鹿市のみに伝わる立体的な紙細工「山鹿灯籠」(伝統的工芸品)の別名。代表作の金灯籠は一見金属製に見えますが、木材や金具は一切使用せず、内部を空洞化した(=骨がない)柱や垂木などの部材を中心に手すき和紙と糊だけでつくることがその名称の由来となりました(人骨とは関係ありません)。
山鹿灯籠まつり(毎年8月15日・16日開催)が始まる前に
なお、山鹿灯籠師の女性4人が、日本銀行本店本館(東京都中央区、重文)を題材に半年かけて共同制作した山鹿灯籠がこのほど完成し、山鹿市の山鹿灯籠民芸館で一般公開されています(来年3月末までの予定)。以前、明治期の日本最古の港湾として世界文化遺産に登録された熊本県宇城市の「三角西港」を再現したことがありますが、それを上回る過去最大級の作品だそうです。『骨なし灯籠』の東京上映は、来月5月16日㈮から29日㈭まで恵比寿ガーデンシネマにて、翌6月3日㈫から22日㈰までは東京都写真美術館ホール(月曜休映)で公開されます。山鹿灯籠まつりは毎年8月15日・16日に開催されます(最大の見どころは千人灯籠踊り)。映画を見てから現地のお祭に参加すれば、より大きな感動を味わえるでしょう。