2024.12.23
「漢字一文字」で世相や心情を表現する醍醐味
目次
年末恒例「今年の漢字」は『金』に決定!
去る12月12日「漢字の日」に、今年1年の世相を表す漢字一文字「今年の漢字」が、京都の清水寺で発表されました。今年2024年は、2000年、2012年、2016年、2021年に続いて5回目となる「金」が選ばれました(写真上=製本工房HP内ブログより)。票数は12,148票(総票数の5.47%)。フランス・パリで開催された五輪・パラリンピックでの日本人選手やMLB史上初の記録を量産した大谷翔平選手などの活躍による「光の金(キン)」に加え、政治の裏金問題、闇バイトによる強盗事件、相次ぐ物価高騰などによる「影の金(かね)」を理由に挙げる人が多かったそうです。
末期がんの患者さんが人生の最後にしたためた「漢字一文字」とは
「一文字」といえば、去る12月7日付けの朝日新聞でも「人生の一文字展」を採り上げた原稿が掲載されていました。執筆者は神奈川県横須賀市で「在宅看取り」の普及に取り組む町医者(三輪医院院長)・千葉純さん。千葉さんが担当医として訪問する患者さん、重度の聴覚障害を持つ元自衛官Aさんに関するエピソードでした。Aさんは膵臓がんを患い、約半年の余命宣告を受けますが、40代から始めて師範の資格まで取得した書道を心の支えとしていました。そこで千葉さんが「人生の一文字展」を企画するのですが、予想以上に病状の進行が速く、開催直前にホスピスへ入所。誰もが「一文字展」の参加は困難と思っていましたが、意識が朦朧とするなか何とか持ちこたえ、医療スタッフ同伴のもと会場へ。その場で辛い症状に耐えながら書いた一文字は「都」――奥さんの名前でした。重度の障害を抱えながら自衛官の仕事を全うしたAさんを支え続けた奥さんに対する、この上ない感謝の一文字でした。「おぼろげな意識が奇跡的に目覚め、自分の作品を確認し、満足のうなずきを残したその数日後、ホスピスで穏やかに旅立ちました」と原稿は締めくくっていました。
お墓に「人生の一文字」を刻むとしたら…
2018年12月13日付けの本コラムで、お墓に刻む文字「墓碑銘」を採り上げましたが、最近は洋型墓石が増えてきたこともあり、「和」「絆」「心」「空」など漢字一文字の墓碑銘も多く見られるようになりました。石塔正面に刻む墓碑銘は一人しか書けませんが、墓誌などにスペースがあり、寺院または宗教上の問題がなければ、戒名(法名)などと一緒に、故人が生前に揮毫しておいた「人生の一文字」を彫刻してもよいかもしれません。