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ご遺骨や位牌がなくても供養はできるのか?

目次

違和感を抱いた「遺骨を置かない手元供養」

葬祭業とその関連業者を対象にした商談会「フューネラルビジネスフェア2023」が6月20日・21日の2日間、横浜市のパシフィコ横浜で開催されました。業界の最新情報とトレンドがわかる貴重な場で、毎年、お墓(石材)及び供養関連商品を見て回りますが、ある出展者の手元供養商品に目が留まりました。それはオシャレな飾り棚の上に三具足(香炉、燭台、花立)や写真立などを配置したものですが、納骨スペースらしきものはどこにも見当たりません。担当者に質問すると、この商品は「シーンに合わせて仏具等を自由に置ける」とのことで、写真パネルを見ると、分骨壷も置ける設定になっていましたが、その展示品には置いてありませんでした。それでも供養が成立するとしたら、これまでの供養の概念が根底から覆されることになります。

手元供養の定義とは

とはいえ、手元供養は新しい供養形態で、法律上の定義はありません。NPO手元供養協会によると、手元供養は、その加工・携帯の有無によって、①納骨容器(石製品や陶器など)、②ペンダント型、③遺骨加工品(粉骨を混入したプレートやダイヤモンドなど)の3タイプに大別されるものの、いずれも「ご遺骨を身近に供養する」ことが前提となっています。つまり、そこに遺骨がなければ「手元供養」とは言えない(=供養できない)のです。

お墓と仏壇(位牌)の違いは何なのか

「それなら、遺骨を置かない仏壇に手を合わせても供養できない」と思うかも知れませんが、仏壇(小さいお寺)には必ず位牌が置いてあります。中国の礼に関する諸説集『礼記』に「魂気(霊魂)は天に帰り、形魄(白骨)は地に帰る」(郊特牲篇)とあり、また思想全書『淮南子』には「魄は人の陰神、魂は人の陽神」とあります。さらに儒教では白骨(形魄)を祭壇に祀り、そこに霊魂(魂気)を招き入れる「招魂再生」という儀式があります。インドから中国経由でもたらされた日本仏教は、これらの思想(死生観や霊魂観)・文化の影響を受けており、お墓は白骨(形魄)を祀るところ、位牌は霊魂(魂気)が宿るところ(依り代)として定着しました。ですから、冒頭の商品で供養しようと思えば、分骨壷または位牌のいずれかを置くことが最低条件となるでしょう。別の出展ブースでは、何と納骨機能の付いた位牌(写真上)も出品されていて、これまたビックリしました。