2022.04.29
墓じまいのトラブルには何がある?後悔しないための注意点や対策方法も解説
目次
墓じまいとは、お墓を維持していくことが難しくなった際に、中にある遺骨を取り出して別の場所へ改葬し、墓石を解体してしまうことを意味します。
それまで先祖供養の場として守り続けてきたお墓をたたんでしまうという行為は、なかなか簡単に決断できるものではありません。様々な事情によってやむを得ず、という方がほとんどだと思われます。
そんな墓じまい、実はお墓にまつわる色々な活動や手続きのなかで、最もトラブルが発生しやすいタイミングのひとつということをご存知でしょうか。
きちんとした事前知識を持って、しっかりと準備をしておかなければ、思わぬところで大きなもめ事に発展してしまう可能性があるのです。トラブルを起こさずに墓じまいを進めるためには、どういった点に気を付けておくべきなのでしょう。
今回の記事ではそこに焦点を当てて、ケースごとに詳細を解説してまいります。現在墓じまいをお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
親族とのトラブル
墓じまいを行う際に起こりうる問題のひとつとして、親族とのトラブルが挙げられます。
それまで仲の良かった家族が墓じまいを機に仲違いしてしまうという話は、決して少なくありません。そのような事態は何としても避けたいものですね。では、どういった点に気を付ける必要があるのでしょうか。
墓じまいの際に親族間でよく起こるトラブルには、主に以下の2点があります。
●墓じまいに対しての意見が合致しない
●費用の負担を誰がするのか決まらない
どういった理由でこれらの問題が発生するのか、またその対策・解決方法はどうすればよいのかを、順に見ていきましょう。
墓じまいに対しての意見が合致しない
墓じまいをするということは、それまで代々引き継いできたお墓がなくなってしまうことを意味します。つまり親族の全員が、もうそのお墓にお参りをすることができなくなってしまうのです。
遺骨は別の場所に移して供養を続けるとしても、墓じまいに対して異を唱える人がいるかもしれません。その意見を無視してことをすすめてしまうと、大きなトラブルのもとになってしまう可能性があることは想像に難くないですね。
対策・解決方法
基本的に、お墓ごとに関する決定権はお墓の名義人が持っています。だからといって、名義人のたった一人の意向で墓じまいを進めてしまうと、上で述べたような親族間トラブルの火種になってしまいます。
まずは墓じまいを考えていることを身内に打ち明け、その必要性を説明しましょう。反対する人がいる場合はそちらの主張にも耳を傾け、双方が納得できるような解決策や妥協案を模索します。
意見を出し合ううちに、もしかしたら一人では思いもよらなかった良案が見つかるかもしれませんね。
何よりも、親族一同が墓じまい(またはその代案)に同意しているという状況を作り上げることが大切です。そのためには時間がかかるかもしれませんが、決して急いではいけません。
墓じまいに取り掛かるのは、皆の合意を得られてからにしましょう。
費用の負担を誰がするのか決まらない
墓じまいを行うには、ある程度のまとまったお金が必要です。
そしてその費用を誰が負担するのか、もし複数人で出し合うのであればその負担割合をどうするのかという問題に、なかなか答えが出ないことがあります。
費用が捻出できなければ、墓じまいを実行に移すこともできません。このような場合はどうすればよいのでしょうか。
対策・解決方法
この問題を解決する方法は、親族全員が協力しあうこと以外にありません。お墓をたたむにはお金が必要で、そのための資金は親族の誰かが必ず負担しなければならないのです。
もちろん、それを全て名義人一人で支払うことができる状況なのであればよいのですが、なかなかそういう訳にもいかないという事情も往々にして考えられます。
誰かに出費を押し付けようとするのではなく、各人ができる範囲で援助し合うといった姿勢で臨みたいものですね。
寺院とのトラブル
寺院墓地にお墓を建てている方であれば、墓じまいを行う際に寺院とのトラブルが起こってしまう可能性が考えられます。
主なものとしては、 法外な離檀料を要求してくるという点が挙げられるでしょう。
このようなトラブルに対する回避策を、以下に紹介致します。
法外な離檀料を要求してくる
寺院墓地にお墓を持ち、且つその寺院の檀家になっているという方であれば、墓じまいとともに檀家を離れるというケースがほとんどでしょう。
檀家をやめることを離檀(りだん)と言いますが、その際には今までお世話になったお礼として、離檀料をご住職へお渡しするのがマナーです。
この離檀料はご住職への感謝を表すものなので、明確な相場というものはありません。ですがご住職から百万円を超えるような法外な離檀料を請求され、トラブルになってしまうといったような事例が稀に見られます。
もしそのような要求を受けてしまった場合は、すぐには支払いに応じず、下記に示す対策をとりましょう。
檀家規則等によって、離檀料の額が定められている場合を除きます。檀家規則に法外な離檀料の記載があるとは考えにくいですが、念のため入檀時に確認しておくことをお勧めします。
対策・解決方法
基本的には、お寺からの法外な離檀料に応じる必要はありません。先に述べたように、離檀料は渡す側の感謝の気持ちをお金に代えて渡すものであり、寺院側から要求されるようなものではないのです。
しかし、墓じまいの工事手続きや改葬証明書の発行をお願いするためには、その問題をなおざりにしておくわけにもいきません。もしそのような事態に陥った場合、まずはご住職と話し合いの場を持ち、平和的な解決を目指します。
その話し合いで解決できなければ、お墓を建ててもらった石材店や、国民生活センターに相談してみましょう。その寺院が属する宗派の総本山に連絡を入れて、仲裁を図ってもらうのもひとつの方法です。
弁護士に相談するという手もありますが、依頼にはお金も時間もかかりますし、全面的に争う意思があるという姿勢を寺院側に見せることになってしまうので、これはあくまでも最後の手段としたいところですね。
これらのことを聞いて、離檀に踏み切るのが怖くなってしまったという方がいるかもしれません。しかし実際にはこのようなトラブルに発展するケースは非常に稀で、ほとんどのご住職には真摯に対応して頂けるので、ご安心ください。
石材店とのトラブル
お墓の撤去工事を依頼する石材店との揉め事も、起きる可能性があるトラブルのひとつです。
特に以下の3点には注意をしておきましょう。
●指定石材店での費用が高い
●墓石が不法投棄される
●墓石の解体工事がずさん
それぞれについて、詳細を説明いたします。
指定石材店での費用が高い
墓地によっては、指定石材店制度を採用しているところがあります。その場合には、墓じまいを行う際の撤去工事や墓石処分などを、指定された石材店以外に依頼することはできません。
その指定石材店に出してもらった見積もりが相場よりも高かった場合には、どうすればよいのでしょうか。
対策・解決方法
提示された墓じまいの額が不当に高いと感じた場合は、石材店に費用の内訳を聞いてみましょう。
ネットなどで調べたり、知人から見聞きした墓じまいの費用相場より高額だと感じていても、実は工事内容に大きな差があって費用に影響しているというのはよくあることです。
お墓の大きさであったり、通常よりも堅牢に作られた基礎工事の解体費であったりと、様々な要因が絡む可能性があるのです。詳しく聞いてみれば、なるほどと腑に落ちるかもしれません。
それでもやはり高すぎると感じるようであれば、石材店にその旨を正直に伝え、価格の交渉を行います。どうしても解決しなければ、国民生活センターなどに助力を仰ぎましょう。
また、指定石材店以外に撤去工事を依頼したいと思う方もいらっしゃるかもしれませんね。しかしそれは、あまり現実的ではありません。
事情によっては、墓地の管理者から例外的に許可を頂けるケースもなくはないですが、可能性は低いと考えておきましょう。
墓石が不法投棄される
墓じまいを行った石材店が撤去後の墓石を不法投棄する、という事件が一時期よく報道されていました。それらの不法行為は、最近では少なくなったとはいえ、完全になくなったわけではありません。
自分の家のお墓が山中に打ち捨てられている光景は、想像だにしたくありませんね。そんな事態を避けるには、どういった点に注意する必要があるのでしょうか。
対策・解決方法
まずは、撤去後のお墓の処分方法を石材店から聞いておくことが大切です。多くの場合、棹石(墓石の一番上に乗っている、家名が彫ってある石。竿石・軸石とも)以外の石材はほぼ全て産業廃棄物として処分されます。
しかし棹石だけは、それまで魂を宿していた特別な石という扱いのもと、ほとんどの廃棄物処理場では取り扱ってもらえません。そのためきちんとした石材店であれば、棹石を永代奉納するための場所を確保しています。
しかしそういった施設を持たないところが、棹石の処理に困って不法投棄に走ってしまうことがあるのです。ですので撤去後の墓石、特に棹石については、どこへ持っていくのかを事前に確認しておきましょう。
また石材店や運搬業者が、産業廃棄物収集運搬業の資格を取得しているかどうかも重要なポイントです。
墓石の解体工事がずさん
「墓じまいを依頼した石材店の工事がずさんだ」というトラブルも、よく見られる事例です。工事そのものは誠実に行ってくれる石材店であっても、工事内容を間違えてしまうという問題が発生してしまうことも考えられますね。
起こりがちなケースとしては、以下のようなものが挙げられます。
●撤去後の整地や周辺の清掃がきちんとなされていない
●地中にある納骨室の撤去をせず、埋めて隠してあるだけ
●巻石(墓地の敷地を囲うように設置されている石。外柵・境界石とも)が撤去されていない
●上記とは逆に、巻石や納骨室を残しておかなければならないのに撤去されてしまった
●遺骨の掘り出しが不十分(遺骨を骨壷から出して埋葬する地域の場合)
撤去工事が中途半端であったり、指定された工事が行われていない場合には、墓地管理者から再工事を求められることもあります。
本来であれば不要な手間ひまが余計にかかってしまうので、次の章で述べる点に注意し、しっかりと準備を整えておきましょう。
対策・解決方法
まずは墓地管理者から、どこまで墓石を撤去する必要があるのかや、墓石撤去以外にどういった工事が必要なのかをしっかりと聞いておくことが大切です。その内容を、過不足なく石材店に伝えましょう。
墓地によっては巻石は撤去不要とするところや、納骨室を残しておかなければならない場合などがあるので、注意が必要です。
また撤去工事の当日に立ち会うというのも、ずさんな工事を抑止する良い方法ですね。事前に立ち会いたい旨を石材店に伝え、石材店の工事予定日時を伺っておきましょう。
その他のトラブル
今まで挙げた例の他にも、墓じまいをすすめていくうえでは様々なタイミングでトラブルが起こる可能性があります。いったいどのようなものが想定されるのかを見ていきましょう。
次の納骨先が決まらない
お墓の中に遺骨がある場合、墓じまいの後にその遺骨をどこか別の場所へ移さなければなりません。別のお墓が既にあれば問題ありませんが、そうでない場合は次の納骨先を新たに決める必要があります。
「お墓をたたんでお骨上げをしたものの、その遺骨をどこに持っていけばよいのかわからない…」となってしまっては困りものですね。
墓じまいを急ぐあまりその準備を疎かにしてしまうと、遺骨を供養してあげられない期間ができてしまうので、きちんと計画を立てておきたいところです。
対策・解決方法
新たな遺骨の納骨先は、必ず墓じまいの前に決めておきましょう。
納骨堂へ納めたり、信奉する宗派の総本山へ預けたりと様々な方法が考えられるので、親族間で話し合いの場を設け、意思統一をしておく必要があります。
墓地に合祀墓が併設されているのであれば、そこで永代供養をお願いするのもひとつの方法ですね。
墓じまいのトラブルに関する相談先
どうしても自分たちだけではトラブルを解決できないという事態に至った場合は、以下のようなところへ相談してみると、解決への糸口が見つかるかもしれません。
●国民生活センター(消費生活センター)
●弁護士
この2つについて、解説いたします。
国民生活センター(消費生活センター)
国民生活センターは日本の独立行政法人のひとつで、国民生活の安定及び向上を図るために設立された機関です。企業と消費者の間でトラブルが起きた場合、無料で相談にのって頂けます。
平日の9時~17時、土日・祝日であれば10時~16時の間に「188」とダイヤルすれば、各所の相談窓口へ繋がるので、困った際には利用しましょう。電話でなく対面での相談を希望する場合は、全国にある消費生活センターへ直接出向くこともできます。
国民生活センターは国が管理、消費生活センターは地方の管理と違いはありますが、両者は連携しているのでどちらへ相談しても構いません。
弁護士
トラブルの相談先としては、弁護士もひとつの選択肢です。
最近では初回相談無料など、条件付きで費用がかからないところも多くありますが、基本的には相談であってもお金がかかります。本格的に法廷で争う場合には心強い味方となりますが、裁判には多くの時間とお金を費やさなければなりません。
まずは他の方法での和解を試みて、弁護士に頼るのはどうしても解決しない場合の最後の手段と考えておきましょう。
墓じまいのトラブルに関するよくある質問
ここからは、墓じまいに関するよくある質問をご紹介してまいります。
事前に色々なケースを知って心構えをしておけば、予期せぬトラブルを回避できるかもしれませんね。
Q. 墓じまいをすると祟られるというのは本当ですか?
墓じまいをしても、決して祟られるということはありませんのでご安心ください。お墓で眠っているのは悪霊でも妖怪でもなく、ご先祖の方たちなのです。
きちんとした理由があって墓じまいをするのであれば、ご先祖の皆さんも自分たちのことを思ってしてくれているのだと、きっと理解して頂けるでしょう。
Q. 墓じまいに補助金は無いのでしょうか?
自治体によっては、墓じまいの際に一部費用の免除や補助金を受けられる場合があります。そのような制度を設けている自治体は決して多くはありませんが、一度役所へ確認してみてはいかがでしょうか。
たとえ補助金は出なくても、それに代わるなんらかの制度を紹介してもらえるかもしれません。まずは電話や窓口で相談してみましょう。
Q. 墓じまい以外にもお墓にまつわる親族間トラブルについて知りたいです。
墓じまい以外でのお墓に関する親族間トラブルは、お墓の承継時に多く見られます。誰がお墓を承継するのかといった問題が、その最たるものでしょう。
承継者本人を含めて周りの意見が一致すれば問題ないのですが、お墓を承継する立場の人物が拒否した場合や、複数人が承継者として手を挙げた際には、注意しなければなりません。
皆が納得できる答が出るまで、幾度も話し合いを重ねる必要があります。その話し合いが不十分で、結論が出ないうちに行動を起こしてしまうと、深刻なトラブルに発展してしまうかもしれないのです。
他にも、お墓を建てる際に選ぶ墓地の立地や墓石の形状、合祀や永代供養についての決定などもトラブルの火種になりがちですね。
いずれにしても最も重要なポイントは、親族間での協議を重ねること、この一点に尽きます。ご先祖の方々も気長に待ってくれている筈ですので、急がずにじっくりと事にあたりましょう。
最後に
お墓をたたむ際には、様々な点に注意を向けなければいけないことがお分かり頂けたでしょうか。お墓を建てるときよりも、むしろ墓じまいの方が慎重に行動する必要がありそうですね。
「墓じまいをして良かった」と親族のみんなが思えるような方法を、ゆっくりと時間をかけて模索していきましょう。