2022.04.29
お墓の名義変更はどうすればいい?手順と費用について解説します
目次
お墓を建てる際には必ず名義人をたてる必要があることを、皆さんはご存知でしょうか。お墓の名義人とは、墓地の永代使用権を持つ人物のことを指します。
この名義人が亡くなった際には、お墓を承継する人物に名義を移さなければいけません。
また現名義人が存命であっても、お墓の維持管理を続けることが難しくなった場合などには、別の人物を名義人とする必要が生じることもあります。
このお墓の名義を移す行為を「名義変更」と呼び、子々孫々にわたって代々お墓を引き継いでいくためには欠かせない、大切な手続きとなります。
しかしいざお墓の名義変更を行おうとしても、どこから手を付ければ良いのかわからないという方もいらっしゃることでしょう。
そこで今回は名義を変更するにあたって気を付けるべき点やその手順、費用などについて詳しく述べてまいります。いざという時に慌てずにすむよう、ぜひ本記事をお役立てください。
日本では墓地を個人で所有することは認められていないので、墓地そのものを購入することはできません。 一般的に「墓地を買う」と言う場合、永代使用権(永代にわたって墓地を使用する権利)を取得する行為のことを意味します。
お墓の名義変更の手順・方法は?墓地管理者へ申請する
お墓の名義変更を行う場合、まずは墓地の管理者へ連絡を取りましょう。直接管理者のもとへ出向いても良いですし、電話番号がわかっていれば電話で連絡を取っても構いません。
例外はありますが、墓地ごとの連絡先は主に以下のようになります。
墓地形態 | 管理者・連絡先 |
寺院墓地 | お寺のご住職 |
事務所が常設してある墓地 | 霊園事務所 |
事務所がない公営墓地 | 当該地域の役所や自治会長など |
事務所がない民間墓地 | 管理者、または墓地管理などの業務を委託されている民間会社など |
連絡が取れれば、管理者へお墓の名義変更を考えている旨を伝え、必要となる書類やその手続きの方法を聞いておきます。
また墓地によっては、お墓の承継者となれるのは長男のみ、といったような制限がかかっている場合もあるので、その点も確認しておくとよいでしょう。
墓地管理者が分からない場合の確認方法
事務所が常設されていない墓地の管理者へ連絡を取る際には、現地に設置されている看板などを頼りに連絡先を調べます。しかし、もしそのような看板が見当たらない場合はどうすれば良いのでしょうか。
そんな時には、墓地を取得した際に受け取った書類を見返してみましょう。墓地管理者の連絡先が記載されている書類がみつかるかもしれません。
お墓を建ててもらった石材店が分かるようであればそこに聞いてみても良いですし、霊園名をネットで検索するという方法も時には有効な手段となります。それでも分からないようであれば、墓地のある地域の役所へ相談してみましょう。
お墓の名義変更で必要な書類一覧
お墓の名義変更を行う際には、幾つかの書類を準備しておかなければなりません。
墓地によって必要な書類に違いがありますが、主に以下の6点を揃える必要があります。
●名義変更届
●墓地使用許可証(永代使用許可証)
●新名義人の住民票
●新・旧名義人の戸籍謄本
●印鑑証明書
●遺言書・理由書
各書類について、以下に詳しく解説いたします。
名義変更届
お墓の名義を変更するには、まず名義変更届が必要となります。この書類は各墓地・霊園によって書式が違うので、管理者からその墓地に対応しているものを受け取るようにしましょう。
またホームページからダウンロードできる場合もあるので、墓地が遠くにある方は活用してみてはいかがでしょうか。
墓地使用許可証(永代使用許可証)
墓地使用許可証(永代使用許可証)とは墓地を取得した際に発行されるもので、その墓地のいわば権利書となるものです。名義変更の際には、この墓地使用許可証を管理者へ提示しなければなりません。
名義が変われば許可証に記載されている内容も変更となるので、一時的に管理者へ預けて追記してもらうか、現在の許可証を返納して新たな許可証を受け取りましょう。
新名義人の住民票
新たに名義人となる方の住民票も必要となります。
住民票には本籍地が記載されているものとそうでないものがありますが、多くの霊園では本籍地記載住民票の提出が求められます。住民票取得の際にどちらを選べば良いか忘れてしまっても、本籍地記載の方を選んでおけば間違いありません。
新・旧名義人の戸籍謄本
新・旧両名義人の関係性を明らかにするための書類として、両者が記載されている戸籍謄本を取得しましょう。
名義人が亡くなった場合にのみ名義変更を許可する墓地であれば、旧名義人の死亡年月日が記載されているかどうかの確認も必要です。
印鑑証明書
名義変更届への捺印に実印を使用する場合は、印鑑証明書を取得して提出しなければいけません。実印ではなく認印で良いとされているようであれば、印鑑証明書は不要です。
遺言書・理由書
もし旧名義人が遺した遺言書や理由書に墓地の承継者が指名されているようであれば、持参して管理者に見てもらいましょう。
ただし、たとえ遺言書で指名されていたとしても、その人物が墓地の規約で承継を認められていない立場である場合は、許可が降りないことも考えられます。そのような事態を避けるために、遺言書や理由書を書く際には墓地の規約をよく確かめておく必要があります。
登記を行う必要はない
墓地の承継については、土地の相続などと違って登記の必要はありません。墓地の管理者との間で書類のやりとりを済ませれば、承継の手続きは全て完了します。
また墓地は不動産とはみなされませんので、相続税の支払いも不要です。
お墓の名義変更にかかる費用
お墓の名義変更を行う際にかかる費用としては、主に以下のものが発生します。
●名義変更手数料
●戸籍謄本取得費用
●住民票取得費用
●印鑑証明書取得費用
名義変更手数料は墓地によって違いがありますが、数千円~一万円程度に収まるケースが一般的です。戸籍謄本や住民票・印鑑証明書の取得は一通あたり数百円でできますので、総額でも一万円を大きく超えることは少ないでしょう。
お墓の名義変更に関するよくある質問
ここからは、お墓の名義変更に関する幾つかの質問に答えてまいります。
特に親族間で承継者を決定する話し合いの場などでは、予備知識をしっかりと持っておかないと話が噛み合わなくなることも考えられますので、名義変更に関する疑問や不安は事前に解消しておきましょう。
Q. 生前に名義変更はできますか?
現名義人に名義変更の意思があり、承継する人物も了承済みなのであれば、原則可能です。しかし、名義人の死亡時以外は名義変更を認めないという規定がある墓地では、生前の名義変更はできません。
そのようなケースでも、やむを得ない事情を抱えている場合はいちど管理者へ相談してみてはいかがでしょうか。理由によっては名義変更が認められるかもしれません。
Q. お墓を相続する際も名義変更の手順は変わりありませんか?
お墓の名義を変更する行為そのものがお墓の相続にあたるので、名義変更の手順に変わりはありません。
相続と聞くと親から子へ受け継ぐ行為と想像しがちですが、その逆に子から親へ、また配偶者などへの名義変更もお墓を相続すると表現します。
いずれにしても、新名義人が墓地の規定上問題ない立場の方であれば、手続きの内容は全て同じと考えれば大丈夫です。
親族以外に名義を移す場合など、厳密にはお墓の相続にあたらないケースも考えられます
Q. お墓の名義変更は行政書士に依頼できますか?
お墓の名義変更は、行政書士に依頼することができます。その際の費用はさほど高額ではなく、2~3万円ほどで対応してくれるところがほとんどでしょう。
しかし名義変更の手続きは決して難しいものではなく、難解な法律の知識等もそれほど必要ではありません。
管理者からしっかりと手順を伺っておけば初めての方でも問題なく進めることができますので、特段の事情がなければ、まずは自分自身で始めてみてはいかがでしょうか。
Q. お墓の相続を放棄したいのですが可能でしょうか?
土地や財産の相続とは違い、お墓の相続は放棄することができません。とはいうものの、諸々の事由でお墓を継ぎたくない、あるいは継ぐことができないという方もいらっしゃるでしょう。
その場合は一旦お墓の名義を承継した後、墓地の使用権を管理者へ返還するとともに、墓じまいを行う必要があります。
《関連記事》 墓じまいとは?費用相場や方法・流れ等を徹底解説
Q. お墓を兄弟二人で相続することはできますか?
たとえ兄弟であっても、同時に2名以上の人物がお墓を相続することはできません。名義変更の際には、墓地の名義人をどちらか一人に定める必要があります。
ただしそれは、あくまでもお墓の名義という点に限った話です。二人で維持費を分担しあったり、協力してお墓の管理に注力するといったことであれば、全く問題はありません。
Q. 娘でもお墓の相続はできますか?
お墓は、性別に関わらず相続することが可能です。一般的にはお墓は長男が継ぐものという慣習がありますが、長女や次女が承継しても問題ありません。
もし女性はお墓を継げないとなると、女の子しか生まれなかった家庭ではお墓を承継することができなくなってしまいますね。
ですがお墓を相続した女性が結婚した場合には、嫁ぎ先と実家の2つのお墓の面倒を同時にみる必要が発生します。
その点についてだけは、男性がお墓を承継した場合と異なるので注意しておきましょう。
墓地によっては規定で認められないケースもあります
最後に
お墓の名義変更に関する今回の記事はいかがでしたでしょうか。
現在お墓をお持ちの方であれば、いずれはその機会が訪れることになります。その際、スムーズに承継の手続きを済ませることができれば、親族一同、そしてなによりお墓で眠っているご先祖の方々も安心ですね。
今あるお墓を将来にわたって存続させるために、正しい名義変更の知識を身に付けておきましょう。