2022.04.29
お墓を建てる手順・費用相場は?時期などについても徹底解説
目次
多くの方にとって、お墓を建てるという経験は一生に一度きりの機会になります。
「お墓を建てるのはこれで5度目だから、もう慣れたものですよ」なんていう方は、なかなかいないでしょう。
人は初めての物事に当たるとき、どうしても尻込んでしまいがちです。いざお墓を建てようと思ったはいいものの、不安が先走り、なかなか最初の一歩を踏み出せない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はそんな皆様へ、どのような手順を踏めばトラブルなくお墓が建てられるのかを解説してまいります。
お墓を必要としている皆様に役立つ情報満載ですので、ぜひ最後までお目通し下さい。
お墓を建てる手順
ではお墓を建てるにあたって、まず何から手を付ければ良いのでしょうか。順序立てずにことを始めてしまうと、あとから困ったことになるかもしれません。
円滑にお墓を建てるために、以下の順で進めていくことをお勧めします。
①予算を決める
②霊園や墓地を選ぶ
③石材店を選ぶ
④墓石の種類やデザインを選ぶ
⑤工事
⑥お墓の完成後に開眼供養を行う
では以下に、各項目について説明いたします。
1. 予算を決める
まずは予算をある程度大まかに考えておきましょう。
何世代にもわたって受け継いでゆくであろうお墓の購入は、後悔の残らないようにしたいものです。ここ十数年でお墓の価格相場は下がってきたとはいえ、決して安い買い物ではありません。
軽々に決めず、時間をかけて勘案しておきたいところですね。また墓地へ見学に行った際にも、ざっくりとした予算を最初に伝えることでスムーズに話が進みます。
お墓を建てる際の費用相場は100万円~300万円
お墓の費用は、主に以下の3つに分類されます。
●墓地代(永代使用料) 30万円~
●墓石代 60万円~
●管理費やお布施などその他の費用 5~10万円程度
墓所の広さや墓石の品質等によって価格は大きく変わりますが、1平方メートルの墓地にお墓を建てる場合は100万円ほどの予算が必要です。
既に墓地をお持ちの方であれば、墓石代とその他の費用のみの出費となります。
広めの敷地を確保したり墓石に国産の御影石を使用したりすると、それに応じて費用の総額は増えていきます。墓地によってはお買い得なセット商品を選べたりもするので、希望に合うものがあれば選択肢に入れるのも良いでしょう。
安く抑えたい場合には永代供養や樹木葬を考える
個別に墓石を建てる必要のない永代供養や樹木葬(注)を選ぶことで、費用を抑えることが可能です。お墓を建てるためのお金が工面できない場合は、これらの方法を考えてみるのも良いでしょう。
大型の民間霊園であれば永代供養・樹木葬、どちらの施設も備わっていることが多く、豊富なバリエーションも期待できます。永代供養や樹木葬についてはこちらでも詳しく解説していますので、ご参考にして下さい。
(注)墓石を建てるタイプの永代供養や樹木葬も存在します。その場合には、一般的なお墓と同程度の費用がかかることがあります。
2. 霊園や墓地を選ぶ
予算が決まれば、どこにお墓を建てるのかを決定しましょう。既に墓地をお持ちの方は、次の項目「石材店を選ぶ」にお進みください。
まずは立地条件から墓地の候補を探します。
自宅から近いに越したことはありませんが、市街地や駅前など利便性の高い場所にある墓地は価格も相応のものになります。
公共交通機関や自家用車などの移動手段がある場合は、逆に少し遠くても郊外の大型霊園を選ぶことで、価格や広さ、充実した設備等のメリットを享受できるでしょう。
予定しているお参りの頻度も考えて、総合的に判断する必要があります。
幾つかの候補がみつかれば、現地の雰囲気や管理体制、価格などを確認するために現地へ足を運びます。
最近ではネット上で手続きを進めることもできますが、現地を見ないまま契約してしまうのは、よほどの事情がない限り避けた方が無難です。また一人で見学するのではなく、親族と一緒に行くことで色々な視点からの意見を参考にすることができるでしょう。
皆が納得できる墓地や霊園が見つかるまで、根気強く探し続けることが大切です。
3. 石材店を選ぶ
次にお墓を建ててもらう石材店を決定します。
墓地の近くに店舗を構えている個人経営の石材店や、広範囲の地域をカバーしている大手石材店など、選択肢は幾つかあります。信頼できる石材店かどうかを見極めるのが最も重要な点ですが、その判断は簡単ではありません。
まずは自分自身でお店を訪ねて、店舗内の雰囲気や担当者の対応を見るとともに、近所の評判やネットの口コミなども参考にしてみましょう。
また墓地によっては指定石材店制度によって、選べる石材店が決まっていることもあります。墓地の信用問題に関わるため、一定以上の品質水準をクリアしていないと指定石材店にはなれなません。
指定石材店となっている店舗は、ある程度の信用は置けると考えて良いでしょう。
4. 墓石の種類やデザインを決める
石材店が決まれば、どんなお墓を建てたいのかを担当者へ伝えます。
墓石の形には大きく分けて、和式墓と洋式墓の2種類があります。
和式墓
「お墓」と聞いて最初に思い浮かぶ形は、この和式墓ではないでしょうか。
一番上に、縦に細長い棹石(竿石・軸石とも)が乗っていて、その下に2段または3段の台座が重ねられています。長い歴史のなかで各所寸法の比率や部材の配置が定まっていき、現在の形となりました。
地域によって多少異なる点はありますが、基本的な造形は共通しています。
洋式墓
和式墓と違い、定められた形状というものは特にありません。背が低めのものが多いですが、なかには和式墓よりも背が高いものも存在します。
かつてはキリスト教のためのお墓というイメージがありましたが、今では仏教や神道の方でも洋式墓を選ぶ人が増えました。
しかし寺院の境内にある墓地などでは、和式墓以外の建立を認めないといったところも存在します。洋式墓を建てたい場合は、墓地の規約を確認しておきましょう。
また「デザイン墓石」と呼ばれるオリジナルな形状のお墓も、洋式墓の一種になります。
バイクやピアノなど故人の趣味を形にしたものや、素材にガラスを用いたものなど、個性的なお墓を建てたい場合は石材店に相談してみましょう。
5. 工事
お墓の形状が決まり契約を交わせば、いよいよ墓石の製作開始です。墓石の製作には通常1~2ヶ月ほど、更にその後の建立工事に1ヶ月ほどの期間が必要となり、完成までは合計で2~3ヶ月かかります。
完成予定日を事前に聞いておき、その間にご住職と開眼法要の日取りを打ち合わせしておけば、完成後の開眼法要をスムーズに行なえます。
墓石の据付工事に立ち会いたい場合は、その旨を石材店に伝えて各工事の予定日を伺っておきましょう。
6. お墓の完成後に開眼法要を行う
お墓の完成後には、ご住職を呼んで開眼法要を行います。特定の寺院とのお付き合いが無い場合は、石材店に紹介してもらいましょう。
遺骨がある場合は、同時に納骨法要もご住職へ依頼しておきます。
百ヶ日や一周忌などに合わせた納骨を考えている場合は、お墓の完成までにかかる期間を逆算して、早めにお墓探しにとりかかる必要があります。
【注意】納骨する際は埋葬許可証(火葬証明書)が必要
お墓へ納骨をする際には埋葬許可証(火葬証明書)が必要になります。埋葬許可証は、火葬場で遺骨とともに受け取ることができる書類です。
納骨時に墓地の管理者へ渡す必要があるので、それまでなくさないように保管しておきましょう。
また埋葬許可証は必ず原本の提出が求められますが、他に必要となる場面はないので、コピー等を残しておかなくても問題ありません。
万が一紛失してしまった場合は、火葬場か役場で再発行をしてもらうことができます。どちらで再発行を受け付けてくれるかは地域によって異なるので、まずは問い合わせてみましょう。
墓石を建てる以外にも供養する方法はある
墓石の建立以外にも、色々な供養の方法があります。
特にここ十数年ほどで、それらの選択肢を選ぶ方が大幅に増えました。
●「お墓を建てても跡を継ぐ者がいない」
●「お墓は不要という故人の遺志を尊重したい」
●「お墓にお金をかけたくない」
など、その理由は様々です。
では具体的にどのような方法があるのでしょうか。
●永代供養
●樹木葬
●散骨
●合祀墓
●納骨堂
●手元供養
代表的なこの6つについて、以下に解説してまいります。
永代供養
特定の寺院に、永代にわたって(あるいは期限を設けて)供養をお願いする方法です。
遺骨の埋葬場所としては合祀墓が多く見られますが、公園型樹木葬などと組み合わされることもあります。合祀墓への埋葬であれば費用は安く抑えられるでしょう。
自らお参りに出かけるのが難しい高齢の方やお子さんがいない方にとっては、安心できる埋葬方法といえます。
公園型樹木葬
公園型樹木葬は、霊園の中に作られた樹木葬専用区画に遺骨を埋葬する方法です。
お参りのためのスペースや水場がしっかり確保されていて、普通のお墓と同じようにお参りできる点が、里山型樹木葬との大きな違いになります。
樹木の周りに小型の墓石を備えているものや、個別納骨か合祀されるかの違いなど、多種多様なタイプが存在しますので、希望に沿った場所を探しましょう。
一般的な墓地にはあまり見られない、華やかな雰囲気が特徴です。
散骨・里山型樹木葬
散骨とは、遺骨をパウダー状にして海や山に撒くことで故人を弔う方法です。
里山型樹木葬と呼ばれる、山中に自然に生えている木の根元への埋葬も、同じ大自然へ遺骨を還すという意味では似た方法と言えるでしょう。
ただし、どこにでも勝手に散骨していいというわけではありません。場合によっては罰せられることもありますので、まずは散骨・里山型樹木葬を専門とする業者に相談してみましょう。
散骨をする場合は遺骨の場所がわからなくなるので、あとからお参りに行くことができない点を理解しておく必要があります。
合祀墓
色々な方の遺骨を一箇所に納めるお墓のことを、合祀墓と呼びます。
集合墓や共同墓とも呼ばれ、同じコミュニティや宗派に属する人たちが入るためのものと、申し込んだ方全てが入れるタイプの2種類が存在します。
自分でお墓を建てる必要がないので費用は安価に済ませられますが、血縁関係にない方の遺骨と同じ場所に埋葬されることに懸念を感じる方にはお勧めできません。
また一旦納骨をしてしまうと後から遺骨を取り出すことができないので、ゆくゆくはお墓を建てたいと思われている方は注意しましょう。
納骨堂
納骨堂とは、主に室内に設けられた納骨スペースに遺骨を納め、お参りも行える施設を指します。
納骨スペースの広さによって納められる遺骨の上限数が異なり、それに応じて価格も様々です。またロッカー式や自動搬送式などの種類があり、好みに応じて選ぶことができます。
市街地や駅前など立地条件が良いのが特徴で、頻繁にお参りをしたい方にとっては便利ですね。
納骨堂はお墓に比べて安価なイメージがありますが、仏壇を模した豪華なものなど、高価格帯な納骨堂も存在します。
手元供養
お墓を建てずに、遺骨を手元に置いて供養する方法です。
おしゃれなデザインの骨壷や遺骨を収納出来るアクセサリーなど、多様な商品が販売されていますので、自分に合ったものを探してみてはいかがでしょうか。ただし代が途絶えた際に、遺骨の行く先がなくなってしまう点には注意が必要です。
他の方法で正式に供養や埋葬をするまでの、一時的な手段と考えておきましょう。
お墓を建てない方が良い時期や日・年
お墓を建てない方が良い時期というものはあるのでしょうか。
良く耳にする話としては、「うるう年にはお墓を建てない方が良い」というものがあります。
このいわれの発端は江戸時代までさかのぼり、武士の俸禄が目減りするうるう年に、多額の出費を伴うお墓の建立はやめたほうが良いというところからきています。当時のうるう年は13ヶ月あり、月給ではなく一年ごとに俸禄をもらっていた武士にとっては、生活が厳しくなる一年だったのですね。
もちろん現代においては全く影響がありませんので、うるう年にお墓を建てても全く問題はありません。
他にも六曜における仏滅にはお墓を建ててはいけないという話も聞きますが、そもそも六曜は仏教とは発祥が異なるものです。
仏教の教えにはお墓を建ててはいけない日というものはありませんので、特に気にする必要はないでしょう。
現実的な問題として気を付けるべき点は、寒い地域でお墓を建てる場合です。雪が降る季節となる前に工事が終わるよう日程を考えておかないと、積雪によって中断してしまうことがあります。
山中の墓地であれば、来春まで山に入ることすら難しくなるケースも考えられるでしょう。雪深い場所にお墓を建てるのであれば、遅くとも秋のうちに工事を終わらせておきたいですね。
お墓に関するよくある質問
ここからは、お墓に関するよくある質問にお答えしてまいります。
同じ疑問を感じている方は、ぜひご参考になさってください。
Q. 自宅の庭に自分でお墓を建てることはできますか?
自宅の庭に、新たにお墓を建てることはできません。
正確には、単なる石のオブジェとして墓石を置くことは問題ありませんが、その中に遺骨を納めると違法になってしまいます。
ただし「墓地、埋葬等に関する法律」が施行される昭和23年以前より、自宅の庭や敷地内にお墓が存在していた場合は、現在も継続して納骨することが可能です。
Q. お墓を建てる場所に制限はありませんか?
お墓を建てることができる場所は、以下の2つと定められています。
●「墓地、埋葬等に関する法律」の施行後に、各地方自治体から認可を受けた土地
●同法施行前より慣例的に墓地として扱われ、実際にお墓が建っていた土地(みなし墓地)
これ以外の場所にお墓を建てることはできません。現在の墓地や霊園は、この2つのいずれかに必ず該当します。
Q. お墓を建てるのに良い日はありますか?
「お墓を建てる日」がどの時点を指すのか明確な定義がありませんが、一般的には工事が全て完了し、開眼法要を行う日と考えて良いでしょう。
その場合の開眼法要に適した日というものは、仏教において特に定められてはいません。むしろ自分達の都合を優先して日程を考えるほうが、結果的に良い開眼法要を行うことに繋がります。
例えば、一周忌の命日にこだわるあまり平日に開眼納骨法要を行えば、仕事がある方にとっては大きな負担となってしまいます。
また法要は屋外で長時間にわたって行われるので、高齢の方が参列する場合は、真夏の暑い日や雪の降るような寒い日も適しません。
そういった時期を避け、参加者全員の「都合が良い日」を選ぶことが「お墓を建てるのに良い日」になると言えるでしょう。
Q. 「お墓を建てる」という言葉の言い換えや類義語はありますか?
「お墓を建てる」と同じ意味として「建墓」や「お墓の建立(こんりゅう)」という言葉がよく使われます。どれを用いても問題ありませんので、その場に応じて相手に伝わりやすい表現を使いましょう。
ちなみにどの言葉も、墓石を作るだけでなく「墓地を取得する」「開眼法要を行う」「遺骨を納める」といった一連の流れを含めて用いられることがあります。
Q. お墓は親族の誰が建てるべきですか?
親族内で誰がお墓を建てるべきかという問題は、亡くなった方によって考え方が変わってきます。
●家長が亡くなった場合
●家長以外の人が亡くなった場合
この2つの場合に分けて解説いたします。
家長が亡くなった場合
家長が亡くなった時には、多くの場合その配偶者または成人した長男がお墓を建てることになります。もちろん長男以外の子供たちや、健在であれば家長の親が建てても構いません。
経済的な問題もありますので、複数人で出資しあうのも一つの方法です。その場合は後でもめないように、誰がお墓の名義人となるかをよく話し合っておきましょう。
家長以外の人が亡くなった場合
この場合は、特に事情がない限り家長がお墓を建てることになります。いずれにしても、必ずしもこうでなければならないという訳ではありませんが、迷った際には参考にしてみてください。
Q. 厄年にはお墓を建てない方が良いですか?
「もし厄年にお墓を建てて、なにか良くないことが起きてしまったら…」と心配になってしまうお気持ちはよくわかります。ですが結論から言うと、気にする必要は全くありません。
厄年かどうかに関わらず、良いことも悪いことも毎年変わらず起きているものです。厄年にお墓を建てたことと周りの良くない出来事とを、無理に結びつける必要はありません。
とはいえ、どうしても年回りが気になってしまうという方は、厄年を避けるのも一つの方法です。大切なポイントは、自分自身が前向きにお墓ごとに当たれるかどうかです。
不安を抱えたまま、平穏な気持ちでものごとを進められないようであれば、時期をずらすことできっと納得のいくお墓を建てることができるでしょう。
最後に
今回の記事はお墓を建てる手順や、気をつけるべき点について解説いたしました。
今はまだお墓がいらない方でも、いずれ必要となった際に読み返して頂ければ幸いです。
後悔のないお墓づくりのために、本記事をぜひお役立て下さい。