2021.11.01
厚労省が「散骨に関するガイドライン」を公表
目次
マイノリティながら散骨者数は少しずつ増加
故人の遺骨(焼骨)を細かく砕いて海や山、河川、湖沼などに撒く「散骨」が日本で大きく注目されたのは、NPO法人葬送の自由をすすめる会が1991年に相模湾で海洋散骨を実施したことでした。ただし、古くは第53代淳和天皇(歴代天皇で唯一)が散骨だったとされ、著名人では石原裕次郎(写真上、横浜市鶴見区の総持寺のお墓)をはじめとして、勝新太郎、安岡力也、新藤兼人、横山やすし(遺灰の一部を宮島競艇場に散骨)、hide、立川談志、藤圭子、海外では周恩来、鄧小平、A・アインシュタイン、I・バーグマン、マリア・カラス、F・マーキュリー、J・マイヨール、ジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、戦犯・犯罪者ではH・ゲーリング、A・アイヒマン、東條英機(GHQにより太平洋に遺棄)、麻原彰晃、新実智光などが挙げられます。映画では『マジソン郡の橋』『男たちの大和』『世界の中心で愛をさけぶ』『あなたへ』など、最近ではNHKの朝ドラ『エール』でも散骨シーンが描かれました。
散骨をめぐるトラブルで自治体は規制の方向へ
日本における散骨の認知度は上がっていますが、それに伴うトラブルも各地で発生しています。陸地及び水源地の近くでは周辺住民や農業従事者から苦情が出ており、海でも漁業(港湾や漁場、養殖場など)や観光業などが風評被害を理由として反対運動が起きていて、条例で散骨を規制する動きが全国の自治体で広がっています。そのため、陸地(私有地)での散骨は、土地の売買に影響すると民事訴訟に発展する恐れがあるため、墓地として認められた場所で樹木葬(自然葬)として行なわれることが多いようです(隠岐諸島の無人島カズラ島では、地元自治体である島根県海士町の理解を得て散骨が実施されている)。
散骨業者を選ぶ目安となるガイドライン
こうした背景もあって今年3月、厚生労働省は事業者向けに「散骨に関するガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000763737.pdf)を公表しました。「陸上及び海洋での散骨場所」「焼骨の形状(粉状)」「関係者及び自然環境への配慮」「約款」「適切な説明と利用者の十分な理解」「文章による契約」「費用明細の添付」「約款に基づく解約」「散骨証明書の交付」「安全確保」などが記されています。最近は究極の安さを売りにした「ワンコイン散骨」も登場していますが、本ガイドラインに則った方法で行なわれているのか、しっかり確認する必要があるでしょう。