2025.06.17
葬祭業の未来を読み解く専門業者の商談会へ
目次
伝統や慣習にこだわらない新たな提案が目白押し
葬祭業と関連業者を対象にした「フューネラルビジネスフェア2025」が6月4日から2日間、横浜市のパシフィコ横浜で開催されました。業界の最新情報とトレンドを把握するため、ほぼ毎年足を運んでいます(本サイトを運営する全国石製品協同組合も後援団体の一つです)。特別企画ゾーンでは、恒例のデザイニング祭壇(写真上は一例)とともに、新たな遺影写真(3D遺影、自筆サイン付、現代アート風など)を提案する「遺す写真展」が開催されました。ここ数年の市場動向は簡素化の傾向を強めていますが、伝統的な儀礼や様式、あるいは各地域に伝わる慣習やしきたりを縮小・取り止めるのではなく、それに代わる新たな方法や提案が多く見られました。
葬祭業にも最新のIT技術が投入されているけれど…
特にAI(人工知能)技術の発達が顕著で、デジタル技術で情報や広告を表示するデジタルサイネージを用いた提案が多く目に付きました。たとえば葬儀会場で、大きなディスプレイに遺影や生前の想い出の写真を映し出して、それ自体を祭壇としたり、若くして亡くなった兄弟姉妹等の幼少期の写真をもとに成人後の容姿を再現したり、AIに生前の音声データを学習させて故人とのリアルな会話を可能にしたり……。故人の人柄や功績、在りし日の想い出を偲ぶための演出としては良いかも知れませんが、そもそも葬祭儀礼(通夜・告別式からその後の火葬、納骨、追善供養も含めて)は、故人の死を遺族が現実のものとして受け止め、気持ちを整理するために必要なことで、それによってグリーフケア(大切な人を失った悲しみや喪失感を癒す)効果がもたらされ、生きる力をもらうきっかけとなるものですが、その本来の目的を見失い、過剰な演出ばかり追い求めてしまうと、遺族が人として成長する(立ち直る)大切な機会を奪いかねない、一種の危機感のようなものを感じました。
問題解決やイメージ転換を図った新たな提案も
新しい提案では、ご本尊を置かず位牌をメインに祀る位牌壇、犬や猫の外形をモチーフにした尻尾付の位牌、防カビ・水難対策に最適な真空骨壷(韓国では過去の教訓から普及が進んでいる)、遺品整理のもつマイナスイメージをプラスに転換させ、遺品の中から大切なものを選び出して写真集などにして残すサービスなどが印象的でした。10年、いや5年後の葬儀・お墓・仏壇は、その善し悪しは別として、今とは全く違うものになっているかも知れません。