2025.05.22
大阪万博のシンボル「太陽の塔」が意味するもの
目次
「太陽の塔」の第4の顔が行方不明に
前回コラムで取り上げた大阪・関西万博に続いて、今回は1970年に開催された大阪万博で芸術家・岡本太郎が制作したモニュメント「太陽の塔」(写真上、万博記念公園HPより)に関する話題です。太陽の塔は大阪万博のシンボルともいえる存在で(つい先日、重要文化財指定が決定)、もともと現在・過去・未来を象徴する3つの顔の他に、第4の顔「地底の太陽(太古の太陽)」が地下にありました。しかし万博閉幕後から長い間、行方不明になっていたため、今回の大阪・関西万博でいのち動的平衡館をプロデュースした生物学者・福岡伸一氏が塔の所在を探る発掘プロジェクトを発足。その調査に密着したNHKのドキュメンタリー番組「太陽の塔 消えた顔を追え」が今月GW中に放送されました。結局、第4の顔は発見に至らず、おそらく分解または裁断された状態で神戸市内の廃棄物処分場に埋められたのではないか、というのが番組の辿り着いた結論ですが、意外だったのは、塔を設計した岡本太郎の制作意図は、実は万博のテーマ「人類の進歩と調和」に対するアンチテーゼ(肯定意見を認めつつも否定すること)だったことでした。
万博プロデューサーの一人、生物学者が沖縄・久高島の御嶽や風葬地へ
福岡氏は、その真意を探るため、岡本太郎がかつて訪ねた沖縄・久高島の御嶽(自然を崇拝する琉球神道における拝み処)や風葬地を巡りますが、そこで「人類は進歩も調和もしていない」という(岡本太郎の)呪術的なメッセージを汲み取ったうえで、その後の50年を振り返って「人類は今なお混迷を深め、分断と分裂が起き、様々な紛争が絶えない」と認識しつつ、改めて「命とは何か」について自問します。そして「(今回の万博がテーマに掲げる)命は有限だから輝く。死があるから新しい生があり、進化が生まれる。死もまた命をつなぐ利他(自己の利益を犠牲にしても他社の幸福を願うこと)である」と総括し番組を締めくくっていました。
太陽の塔は改修後、万博記念公園で公開中!
太陽の塔は万博終了後、万博記念公園(吹田市)に残されたものの、長らく一般非公開でしたが、その後の改修工事を経て「人間の祈りや心の源を表す」とされる地底の太陽(正体はカラスとされる)も復元され、2018年3月より再び公開されています。大阪・関西万博へ行かれる方で時間に余裕がある方は、こちらの太陽の塔も訪ねてみるとよいでしょう。