2022.11.14
お墓も旧姓併記や夫婦別氏で建てる時代か
目次
「夫婦同姓」の不利益に配慮し、一部証明書は旧姓併記が可能に
夫婦別姓(別氏)を認めるべきか否か、日本国内で議論が白熱しています。日本では、夫婦同氏・別氏が選択可能な国際結婚を除いて、婚姻する当事者どちらか一方が氏を変えない限り法律婚は認められていません(民法750条)。夫婦同氏は1898(明治31)年施行の明治民法により規定されたもので、それ以前は夫婦別氏でした(明治9年、太政官指令)。世界に目を向けると、夫婦同氏を法律で定めた国は過去にはあるものの、現在は日本のみです。夫婦同氏によるアイデンティティー喪失、間接差別、改氏による不利益(各種契約の名義変更や印鑑の作り直し等)などを理由に、別氏による婚姻制度の導入などが検討されており、訴訟問題も起きています。昨年の衆議院選挙では、選択的夫婦別氏の賛否が争点の一つにもなりました。こうしたなか、通称として旧姓(旧氏)使用を認める動きが徐々に広がりを見せています。身近な例では、住民票やマイナンバーカード、免許証、パスポート、国民健康保険証(一部自治体)の旧姓併記が可能になっています。
「両家墓」を建てる時は、家名の書き方に要注意
お墓では、妻の実家がいずれ絶家になること(戸主の死亡後、家督相続人がいなくなること)を想定して、一つの墓碑に両家の家名を併記する、いわゆる「両家墓」を建てるケースがありますが、その家名の書き方も事前に確認しておく必要があります。なぜなら、ある公営墓地では「お墓の承継時に混乱が生じる」として、「〇〇家/□□家」の併記を認めてもらえず、その使用者は、不本意ながら家名に『家』を付けない「〇〇/□□ 墓碑」と刻まざるを得なかった、という不満が新聞の投稿欄に出ていたからです。その投稿者は「現代および将来社会は様々な生き方や事情があり、従来の制度(夫婦同氏)がそぐわないケースが多々あろう。(中略)今を、そしてこれからを生きる人々の願いに最大限、柔軟に応えて欲しい」と訴えていました。
お墓の承継や祭祀の主宰は、別姓でもOK
なお、お墓の承継及び祭祀の主宰は、別姓でも可能で、「〇〇家のお墓に、〇〇以外の氏の人を納骨してはいけない」という法律上の規制はありません。ただし、約款や墓地使用規則などで使用者の範囲を制限している可能性もありますので、これも事前に確認しておくとよいでしょう。お墓もいずれ旧姓併記や夫婦別氏(明治維新前の個人・夫婦墓の復活?=写真上)で建てる時代が来るかも知れません