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2022.08.19

「享年」「行年」「没年」「当年」の違い

目次

一般的には享年または行年で表記

墓石や墓誌に故人の亡くなった年齢を刻みますが、一般的には「享年(きょうねん)」または「行年(ぎょうねん/こうねん)」で表記します(写真上)。享年の享には、「有難く受け取る」という意味があり、この世に生を享けた人が亡くなるまで、つまり天から授かった年数を記載します。したがって享年の後ろには本来なら期間を表す数字(出生日を1歳とし、元旦を迎えるごとに1歳ずつ増える数え年)が入ります。しかし1950年「年齢のとなえ方に関する法律」で数え年は廃止され、その後、満年齢(実年齢)が一般化したことで、ニュース番組の訃報等でも「享年100歳でした」という間違った表現が見受けられます。一方、行年は、娑婆(現世)に生まれて何歳まで修行を積んだかを意味し、こちらは満年齢を用います。つまり、享年は「何年間生きたか」、行年は「何歳まで生きたか」の違いとなります(ちなみに満年齢と数え年では最大2歳の差が生じることになる)。また「没年」は死亡した年のことで、この「年」には年齢と年次の2つの意味があり、それを明確にするため「享年89(没年87歳)」などと表記するケースもあるようです。

「当年」「当才(当歳)」という見慣れぬ表記も

上記以外に、「当年」「当才(当歳)」という見慣れぬ表記も見られます。これは生後、元旦を迎えることなく、生まれたその年に(満年齢0歳、数え年1歳で)亡くなった場合の年次または年齢を意味します(ご両親の希望により行年〇ヵ月と記載することはあっても、行年0歳とは書かない)。水子(流産や死産、中絶による胎児)や乳児、幼児、子供の戒名や年齢に関しては、大まかな決まりごとがありますので、稿を改めて別の機会にご説明したいと思います。

お墓から読み取れる様々な個人情報

このように個々のお墓から、その家ならでは特殊な事情や、ある意味「人に知られたくない」個人情報を読み取ることができますので、特別な理由や許可もなく他所様のお墓をじろじろとのぞき込むようなことは極力避けましょう。しかし、詳細は判らずとも、そのような辛い過去を背負ったご先祖様が必死に乗り越えた先に、今の我々(全人類)の生活があることをしっかりと肝に銘じなくてはなりません。生まれたくても生まれなかった、生きたくても生きられなかった、そういう先人の想いを汲み取った上で、感謝の気持ちを忘れず、悔いのない人生を送りたいものです。