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時代とともに「お墓の形」は変わるけれど…

目次

お墓に対する従来のイメージが大きく変化

ひと昔前まで「(一般庶民の)お墓」と言えば、四角い石材を3段に積み上げた和型(いわゆる三段墓)のことでした。今でも寺院墓地や共同墓地、明治~昭和期にできた霊園などで見られますが、首都圏や北海道、九州などにある新しい霊園では、正面は横長で横から見ると斜めにカットされた洋型(いわゆるオルガン型)が主流で、石の色もカラフルなものが増えています。それだけでなく、自由な発想で設計したデザイン墓をはじめ、限られたスペースに効率よく納骨できる壁面型やロッカー型、プレート型、あるいは樹木葬や納骨堂、散骨、手元供養、宇宙葬など、昨今のお墓の形(供養形態)は目まぐるしいスピードで多様化しており、従来のイメージとは大きく変わりつつあります。

より手軽に便利になるほど軽薄化していく大事なもの

お墓参りの仕方も、ホテルのような立派な施設内にある共用の参拝ブースに自家の厨子ずし(仏像や経典、位牌、骨壺など大切なものを納める箱。仏壇も厨子の一つとされる)を呼び出してお参りする自動搬送式納骨堂をはじめとして、ネット上の仮想空間でお参りするバーチャル霊園のほか、本人の代わりにお墓の清掃やお参りをしてくれる代行サービスなどもあります。それを必要とし、喜ばれている施設やサービスもありますが、安易な発想で手軽さや便利さなどコストパフォーマンスだけを追求し続けたら、この先どのようなお墓が誕生するのでしょうか。今年6月14日付けの本コラムで紹介した、墓参者の分身(アバター)が時空列車に乗って月でお参りするネット霊園は、その最先端として位置付けられるもので、いずれAI(人工知能)技術により故人と会話を楽しめるようになるそうですが、より手軽に便利になるほど命(生死)の重みは軽薄化し、お墓参りの本質から遠ざかっていくような気がします。

いつの世も変わらず出迎えてくれる普遍の安心感

ある程度は社会の変化やニーズに合わせることも必要ですが、どんなに時代が変わっても、いつも同じ佇まいで温かく出迎えてくれる、そういう普遍の安心感を与えてくれるのがお墓ではないでしょうか。お墓を隅々までキレイにした後、四季折々の生花を供え、お線香を手向け、心静かに手を合わせる。そこに流れる空気と時間は、その日その場でないと感じられないものなのです。