2018.11.22
北方領土返還で実現なるか元島民のお墓参り
目次
安倍首相とプーチン大統領がシンガポール会談で合意
ここにきて北方領土返還がにわかに現実味を帯びてきました。去る11月14日、シンガポールで開催された安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領の会談で、1956(昭和31)年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることが両者の間で合意に達しました。日本政府はこれまで「4島一括返還」を求めてきましたが、今回の合意で「4島返還を求める姿勢は堅持しつつ、まず歯舞・色丹の2島を先行して返還することを軸に交渉を進める見通し」が強まったのです。これにより元島民による2島でのお墓参りも実現するかも知れません。
一刻も早いお墓の修復を願う高齢の元島民たち
北方4島には52ヵ所の墓地がありますが、かつてソビエト時代に日本人のお墓は壊され、家の土台などに利用されることもあったそうです。そのため、先祖のお墓を建て直すことが元島民の悲願となっているのです。元島民及びその親族による北方領土への墓参は現在、外務省発行の身分証明書により年3回実施(上陸不可、船内からの墓参)されています。しかし元島民の平均年齢は83歳となっており、その負担を軽減するため、昨年より航空機による墓参が始まりました。とはいえ、滞在時間に制限があり、お墓の修復に使える時間は3時間のみということで、初年度(昨年)が現状調査、2年目(今年)に基礎工事、3年目に建て直しという3年計画で修復事業が進められています。
いまなお帰国できない100万人以上の海外戦没者の遺骨
一方、第二次世界大戦中の海外での戦没者は約240万人とされますが、厚生労働省が実施する遺骨収集事業でこれまでに収容された遺骨の数は34万柱(引揚者が戦地から持ち帰ったものを含めると約128万柱)で、いまなお帰国できない遺体や遺骨が多数残されています。
日本では現在「墓じまい」がブームになっています。新しい墓地や永代供養墓への改葬に伴う墓じまいは当然必要ですが、決して安易な考えで供養を放棄してはいけません。墓参に行きたくても行けない「北方4島の元島民」や、帰国したくても帰国できない「海外戦没者の遺骨」がいまなお多数存在するのです。いずれ自分が入るお墓があること、お墓参りに行ける幸せというものについて、我々は今一度、考えてみる必要があるのではないでしょうか。