2018.10.18
仏像が手の指で形を作る「印相」とは?
目次
密教の発達によって意味が説かれるように
寺院等で仏像を見ると、指で様々な形を作っていますが、これは「印相」「印」「印契」といって、ホトケ様の内証(自らの心の中で覚ること。悟り)を表しています。もともと印相に関する儀軌(儀礼や儀式の規定)はなかったのですが、密教の発達に伴って相が定まり、意味が説かれるようになったそうです。
日本国内で見かける代表的な印相だけで十数種類
ここでは国内の寺院等で見かける代表的な印相を幾つか紹介しましょう。まず、手の平を前に向けた印相が「施無畏印」で、すべての畏怖を取り除き衆生(生類)に安心を与えてくれます。下げた手の平を前に向けた印相が「与願印」で、衆生の願いを施し与えてくれます。一般的に如来はこの2つの印相を両手で表したものが多く、与願印を示す左手に薬壷があれば、薬師如来となります。
また座像で、両手の平を上に向けた状態で腹前または膝上で上下に組んだ印相を「定印」といい、これは思惟(瞑想)に入っていることを示しています。釈迦如来や胎蔵界大日如来、あるいは密教の阿弥陀如来が結ぶ「法界定印」は、指を伸ばした状態で左手の上に右手を重ね、両手の親指の先を合わせたものです。一方、金剛界大日如来が結ぶ印相は「智拳印」といって、左手は親指を握った状態で、人差し指だけ伸ばします。そして右手で左手の人差し指を握り、右親指の先で左人差し指の先を合わせます。他にも、阿弥陀如来が死者を迎えに来る時の「来迎印」、死者を仏道に引導する時の「引接印」、説法する時の「説法印」、両手を胸元で合わせる「合掌印」などがあります。
浄真寺の九品仏が示す9通りの極楽往生
東京・世田谷区の浄真寺には9つの阿弥陀如来像(通称「九品仏」)があり、すべて異なった印相を結んでいます。これは『観無量寿経』に説く九品往生の思想に基づくもので、篤信家から極悪人まで9段階の極楽往生があることを示しています。親指と接する指によって「上品」(人差し指)、「中品」(中指)、「下品」(薬指)に分け、さらに「上生印」(定印)、「中生印」(説法印)、「下生印」(来迎印)との組み合わせで、「上品上生印」などと呼び分けています。 このように印相の意味を知ることで、ホトケ様の見方も違ってきます。まるでホトケ様が手話をしているようで面白いですね